ネマニャの音楽にまたも魂を揺り動かされた
2018年10月7日、浦安音楽ホールでネマニャ・ラドゥロヴィチのヴァイオリン、ロール・ファヴル=カーンのピアノによるリサイタルを聴いた。4日に浜離宮朝日ホールで聴いたのと同じプログラム。すなわち曲目はフランス系のヴァイオリン曲。前半にサン=サーンスの「死の舞踏」とフランクのソナタ、後半にドビュッシーのソナタとショーソンの詩曲、そしてラヴェルの「ツィガーヌ」。 ホールが小さくて響きがよいせいか、私は前回以上に興奮した。
精緻な演奏。しかもいっそうダイナミック。前回はネマニャ が伴奏者との掛け合いをかなり気にしている様子が見えたが、今回は完全に信頼した様子。聴いている私は何度心を掻き乱されたことか! 音楽が躍動し、魂が躍動する。細くて鋭い音が聴くものの魂を揺り動かす。細くて鋭くて怜悧といえるような音なのだが、熱い魂がのっているので、けっして冷たくは感じない。
フランクのソナタの第2楽章が終わったところでネマニャが舞台袖で引っ込んで何かを手に持ってきた。松ヤニらしい。第3楽章が始まってから、ちょっとした合間に松ヤニを弓に塗った。ネマニャが激しく弓をうごかすと松ヤニの粉が煙のようには空中に何度か広がった。音楽もそれと同時に大きく広がった。
前回よりはフランクの出来はかなり良かったと思う。まだちょっとピアノの弱さを感じるが、それでもしっかりとネマニャを支えている。第2楽章と終楽章の盛り上がりは素晴らしかった。
ドビュッシーのソナタも前回同様、ドビュッシーの心の動きをそのままたどるような初々しくて感受性豊かなヴァイオリン。きっとドビュッシーは意識の流れそのものをこのヴァイオリンの音に託したのではないか。そう思った。「詩曲」もよかったが、「ツィガーヌ」が圧倒的だった。前回も凄かったが、今日はもっと凄かった。私の全身が揺り動かされた。感動した。
2年ぶりのネマニャはいっそう凄さを増していた。来年もまた来日するとのこと。今から楽しみでならない。
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