アントニーニ+ムローヴァ+読響 とても良い演奏だったが・・・
2018年10月16日、サントリーホールで読売日本交響楽団のコンサートを聴いた。指揮はジョヴァンニ・アントニーニ。曲目はハイドンの歌劇「無人島」序曲、ヴィクトリア・ムローヴァが加わってのベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲、後半にベートーヴェンの交響曲第2番。アントニーニは古楽の指揮者だという。そのため、読響もきわめて古楽的な演奏だった。とてもダイナミックでスリリングなよい演奏だった。
「無人島」序曲は録音も含めて初めて聴いた。なかなかおもしろい曲。ともあれ、アントニーニがかなりダイナミックな演奏をすることはわかった。そして、ヴァイオリン協奏曲。
アントニーニはムローヴァに遠慮したのかもしれない。指揮は少々中途半端だった。古楽系の指揮者にありがちな強弱の激しい疾風怒濤風の音楽で、ティンパニが小気味よく出てくる。ほかの楽器もしっかりと指揮に即している。だが、もっと強調したそうなのに一歩手前で終わっている感じ。ムローヴァはとても繊細で美しく、しかも厳しい音。時々かなりアグレッシブに音の強弱をつける。
それはそれで大変おもしろかったのだが、感動したかというと、それほどでもなかった。ムローヴァが何度か音を外したような気がしたし、かつてのムローヴァの凄みのようなものを感じることができなかった。かつてのムローヴァはもっと張り詰めた切迫感のようなものがあったのだが、そのような緊張感を少なくとも私はあまり感じることができなかった。指揮者の盛り上げ方もあまりに古楽にありがちでワンパターンに思えた。
カデンツァはオターヴィオ・ダントーネという現代作曲家のものだという。初めて聴いたと思う。ところで、ムローヴァはときどきオーケストラの第一ヴァイオリンと一緒に同じ旋律を時々弾いていた。そのような版があるのだろうか。それとも、手持ち無沙汰だから弾いたのか。ネマニャ・ラドゥロヴィチがそのようなことをしているのを見たことはある(ネマニャだったら、何をしても許される!)。あ、それからテツラフも同じようにしていたような気がしてきた。もしかしたら、最近の流行なのだろうか。
ムローヴァのアンコールはバッハのパルティータの「サラバンド」。これも同じ印象を抱いた。もちろん、とてもいい演奏。素晴らしい演奏といっていいと思う。弱音が美しく、深みを感じさせる。が、感動に震えるには至らなかった。
交響曲については、協奏曲と異なって指揮者が思うがままに振った感じがした。協奏曲よりもオーケストラはずっと刺激的でダイナミック。やはりティンパニがバシッと出てくる。おそらくほかの指揮者の場合よりもほんの一瞬早く出るのだと思う。ヴァイオリン協奏曲と同じように、やはり古楽にありがちな演奏なのだが、遠慮なしに演奏しているので、ビシビシと決まっていく。弦を強く響かせスケール大きく演奏する。とりわけ終楽章の音の重ね方がとてもダイナミックだった。
とても良い演奏だと思いながらも、ただ実を言うと深く感動したわけではなかった。確かにダイナミックで振幅の大きな演奏で、とても躍動感がある。とてもスリリングでエクサイティング。だが、古楽の指揮者だったらこのように演奏するだろうな・・・という予想通りに進んでいくという思いを拭いきれなかった。このような演奏は、これまで何度も聴いてきたような気がしたのだ。いずれにせよ、もう少しこの指揮者を聴いてみたいと思う。
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