新国立「魔笛」 大きな感銘は受けなかった
2018年10月8日、新国立劇場で「魔笛」をみた。
歌手陣については特に傑出した歌手はいなかった。タミーノのスティーヴ・ダヴィスリムはとてもきれいな声。パパゲーノのアンドレ・シュエンもまじめな歌いっぷり。ただ、二人とも歌の表情も演技も少々硬い。味わいや面白みを十分に感じなかった。ザラストロのサヴァ・ヴェミッチもとてもいい声なのだが、自在に歌っているようには思えなかった。
日本人歌手は外国人歌手たちにまったく引けを取らない歌と演技だった。夜の女王の安井陽子はきれいな高音をしっかりと出した。パミーナの林正子も色気のある歌い回しはとてもよかった。日本人歌手のレベルの高さを改めて感じた。そのほか、増田のり子・小泉詠子・山下牧子の三人の侍女、モノスタトスの升島唯博、パパゲーナの九嶋香奈枝もとてもよかった。
映像やアニメやドローイングを多用したウィリアム・ケントリッジの演出(新国立劇場では新演出ということになるが、この演出自体は2005年以来ヨーロッパのいくつかの劇場で上演されてきたらしい)。それはそれで変化はあるのだが、何を主張しているのが私にはとらえきれなかった。幾何学的、科学的なドローイングが多かった。ザラストロの語る理智主義を象徴しているのだろう。だが、それにどういう意味があるのか、このオペラをどうとらえているのかははっきりしなかった。映像で銃によって犀が殺される場面があった。理智主義の行きつく先としての武器の開発と殺戮について語っているのかと思ったが、そうでもなさそうだった。結局、新しさはアニメとドローイングだけで、解釈的に踏み込んだところはなかったように思う。むしろ、映像やドローイングのために演技のタイミングが合わせづらくなって間延びしているところが何か所かあったように思えた。
今回の上演で私が最も不満に思ったのはローラント・ベーアの指揮だ。ミラノ・スカラ座でも振っている人らしいが、私はオーケストラに勢いを感じなかった。それなりにまとめているだけで少しも踏み込もうとせず、オーケストラを推進していかない。これではモーツァルトの音楽にならないと思った。東京フィルハーモニーの責任ではないと思うが、私にはオーケストラも間延びしているように聞こえた。いつもは素晴らしい新国立劇場合唱団の歌声もびしりと決まらなかった。
一言で言えば、今日の「魔笛」は、日本人歌手もなかなかのものだということを改めて認識させてくれただけで、残念ながらさほど大きな感銘を与えてくれなかった。
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