竹澤恭子のバルトーク無伴奏と「クロイツェル」 集中力のある真摯な演奏が素晴らしい
2018年11月8日、紀尾井ホールで竹澤恭子のヴァイオリン・リサイタルを聴いた。ピアノ伴奏はエドアルド・ストラッビオリ。曲目は前半にベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第10番とバルトークの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ、後半にブロッホの「バール・シェム」とベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ 第9番「クロイツェル」。とても良い演奏だった。
意外とふつうの演奏で始まった。が、徐々に盛り上がって、曲が終わってみると、とてもよい演奏。逆に言えば、とても構成感のある演奏というべきか。集中力があり、密度が濃く、すべての音に意味がある。音色で聴かせるのではなく、音楽の緻密な組み立てで聴かせてくれる。とりわけ、バルトークの無伴奏ソナタにそれを感じた。凄まじい集中力。遊びを少しも入れず真摯にバルトークの魂に肉薄するような演奏。しかし、一部の女性演奏家のように神がかり的、巫女的な集中力ではない。もっと客観性を持っている。全体を見渡しながら音楽を作っていることがよくわかる。バルトークの苦悩や孤独が伝わってくる。
ブロッホの「バール・シェム」は初めて聴いた。とても魅力的な曲だと思った。竹澤にふさわしい音楽と言えるのかもしれない。祈りの音楽。だが、情にかられすぎないのがいい。
「クロイツェル」も素晴らしかった。ピアノのストラッビオリがとてもいい。品格のある音。とても清潔で高貴で力強い。強い音がとりわけ美しい。第3楽章は圧巻だった。
アンコールはマスネ―の「タイスの瞑想曲」とクライスラーの「愛の悲しみ」、そして最後にワーグナーの「アルバムの綴り」という曲。まさかワーグナーとは思わなかった。あとで掲示を見て知った。これらも真摯な演奏。アンコール曲だということで遊びを入れるのでも、「小粋」にするのでもなく、また情緒を強めるのでなく、しっかりと美しく演奏。見事。
19時に始まって終わったのは21時45分くらいになっていた。
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