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ドゥミの映画「ロシュフォールの恋人たち」「王女とロバ」「モン・パリ」「ベルサイユのばら」

 先日みたアニエス・ヴァルダの映画がきっかけになって、ヴァルダ、そしてその伴侶だったジャック・ドゥミのDVDをしばらく見続けた。感想を記す。

 

51dg6eovl_ac_us200_ 「ロシュフォールの恋人たち」 ジャック・ドゥミ監督 1967

 40年以上前、封切されてすぐにみた。が、「シェルブールの雨傘」よりももっと革新的な傑作を期待していた私には少々期待外れに思えた。が、今、改めてみると、いや、なかなかの傑作ではないか。

「シェルブールの雨傘」でアメリカのミュージカル映画とかけ離れたものを作ったジャック・ドゥミとミシェル・ルグランは、今度はアメリカ・ミュージカルのフランス版をめざしたのだろう。アメリカのミュージカル映画の外枠を借りて、フランス・ミュージカルを作り上げようとしたと言い換えてもいいだろう。いや、もっとはっきり言えば、アメリカのミュージカル映画のパロディを作った。そう考えると、すっきりと理解できる。

「シェルブールの雨傘」には、アメリカのミュージカルには不可欠のダンスの場面が皆無だったので、「ロシュフォールの恋人たち」ではそれをふんだんにいれた。そして、「雨に唄えば」のジーン・ケリー、「ウェスト・サイド物語」のジョージ・チャキリスを呼んで、アメリカのミュージカルへのオマージュというべきシーンも加えた。突然踊りだしたり、背後で人々が踊ったりといった、アメリカ・ミュージカルの様式がかなり不自然に、つまり、けれんみたっぷりに映し出される。

 そして、アメリカ・ミュージカル映画様式のフランス・ミュージカルが間違いなく完成している! 繊細で洗練されており、フランス語の美しい響きにあふれ、フランスのエスプリにあふれている。カトリーヌ・ドヌーヴ、フランソワーズ・ドルレアックの実の姉妹、ダニエル・ダリュー、ミシェル・ピコリという大スター、そして若手で売り出し中だったジャック・ペラン。いずれも、フランス・ミュージカルを見事に作り上げている。

 ストーリーは「ローラ」に少し似ている。港町のカフェに常連客が集まり、そこに過去の恋と現在の恋のいくつかが集まり、すれ違い、最後には、ともあれめでたくまとまる(まとまりそうになる)。軽やかな音楽に載せて深刻になりすぎない恋物語がおとぎ話として展開される。美男美女の繰り広げる歌と踊りによるおとぎ話。それにしても、カトリーヌ・ドヌーヴは美しい。実の姉のフランソワーズ・ドルレアックも魅力的。この撮影直後に25歳で事故死したのが実に残念。美人姉妹の映画をもっと見たかった。

 

51lkvvmhtol_ac_us200_ 「ロバと王女」 ジャック・ドゥミ監督 1970

 封切当時は、大ヒット作とのことで期待してみたわりにつまらないと思ったが、今みると、とてもおもしろい。シャルル・ペローの童話「ロバの皮」のミュージカル映画化。作曲はミシェル・ルグラン。

ある国の王様(ジャン・マレー)が妻を亡くし、妻よりも美しい女性としか再婚しないと約束する。ところが、妻よりも美しいのは実の娘である王女(カトリーヌ・ドヌーヴ)だけだった。王は王女と結婚しようとするが、王女は妖精(デルフィーヌ・セイリグ)に相談して、白から逃げ出し、ほかの国に行って、ロバの皮をかぶって醜い人間として生きる。そこに王子(ジャック・ペラン)が現れ、王女の美しさを知って恋をし、最後に結ばれる。

ドゥミがずっと作ろうとしていたのがまさに「おとぎ話」だったことがよくわかる。純粋な心にあふれた美しい夢の物語だ。ドレスや室内、森、動物たちの美しい色彩、おとぎ話を聴いて頭の中で想像する通りの美しい人々。まさにそれが展開される。そして、ルグランの自然な音楽。アメリカのミュージカル映画のような大袈裟なものではなく、自然でやさしくて子どもらしい純粋な童話。

特典映像でも語られるが、確かにコクトーの「美女と野獣」へのオマージュがあることをうかがわせる。

 

71eymatqx2l_sy445_ 「モン・パリ」 1973

 封切時、カトリーヌ・ドヌーヴとマルチェロ・マストロヤンニ共演のドゥミの映画だということで大いに期待してみたのだが、駄作だと思った。今、みなおしても、やはり傑作とはいいがたい。

 男が妊娠しているといわれ、世界で最初の妊娠と騒がれるが、最後に間違いだとわかる・・・というそれだけの話。それを風刺をきかせて辛らつに描くのではなく、ほのぼのとおとぎ話風に描く。「ロバと王女」のようなおとぎ話を現代を舞台にして物語にするには、このような形しかなかったのだろう。非現実的なストーリーによって、男と女の原型を描こうとしたのだと思う。が、やはり現代の話であるなら、もっとリアリティが必要だ。男が妊娠したというのなら、その時点でもっと厳密な検査がなされるだろうし、そもそもどうやって受胎するのか、どうやって産むのかみる者に納得させる必要があるだろう。それがないと、やはり現代の物語としては説得力を持たない。ちょっと老けたけれど圧倒的に美しいドヌーヴと、信じられないことが自分に身に降りかかって右往左往するくたびれた中年男を演じるマストロヤンニの演技と細かい色遣い、そしてミシェル・ルグランの音楽を楽しむだけの映画になっている。

 

71jl7pm8cl_sy445_ 「ベルサイユのばら」 1978

 池田理代子の原作は、40年以上前に一度だけ読んだことがある。「絶対おもしろい」と友人(男性)に薦められたためだったが、私はあまりおもしろいと思わなかった。その少しあとでジャック・ドゥミが監督して映画になると知って、この題材を映画化するにはドゥミが適役だろうと思った。封切されてしばらくしてみたが、これもおもしろいと思わなかった。そんな思いのある映画のDVDを40年ぶりに見てみた。やはり、つまらなかった。

 原作とかなり異なるというが、私は原作にほとんど覚えがないので、それについてはわからない。が、どうにも中途半端な気がする。何を描きたいのかよくわからない。そもそも私にはオスカルの心の機微が伝わらない。民衆の側に身を投じる心の変化も十分に描かれていない。登場人物の誰一人として魅力的ではない。オスカルを演じるカトリオーナ・マッコールはとびっきりの美人だと思うが、女優としての魅力を感じない。駆け足で歴史の表面をなぞっただけで終わっている。ヴェルサイユ宮殿をロケ地として使いながら、あまりにもったいない。

きっとドゥミは気乗りしないまま、あるいは原作の精神を理解できないまま撮ったのだろう。断れなくて、あるいは報酬が魅力的なためについ引き受けてしまって、なんとかなると思って作り始めたが、やはりだめだった・・・というようなことは誰にもあることだ。ドゥミも人の子だったということだろう。

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