金沢歌劇座「リゴレット」リハーサル、そしてフォスター+新日フィルのブラームス
2018年11月15日にミューザ川崎でウィーン・フィルを聴いたことはすでにこのブログに書いた。その前のことを少し書く。
その日の午後、東京芸術劇場のリハーサル室で11月25日金沢歌劇座公演「リゴレット」のリハーサルを演出家の三浦安浩さんのご厚意により見学させていただいた。演出の現場を見るのは初めての経験だった。これを「立ち稽古」というのだろうか。歌手陣が集まって、山田ゆかりさんのピアノ、副指揮者の辻博之さんの指揮のもとに、第一幕冒頭から三浦さんが演出しながら動きを決めていく。
実は私はひそかに「そのうちオペラ演出をしてみたい」という野望を抱いていたのだが、三浦さんのリハーサルを見て、その野望はもろくも崩れ去った。三浦さんはイタリア語で歌いながら、その意味を歌手たちに理解するように促し、それにふさわしい動きを指示し、それぞれの歌手に音楽面にいたるまでアドバイスする。しかも、マントヴァ公爵役のアレクサンドル・バディアに流暢な英語で指示しているではないか。三浦さんの指示の後、全体の動きは見違えるようにリアルになり、ダイナミックになる。
そして、このリハーサルの音楽的なレベルの高さにも圧倒された。バディアはまだ本気では歌っていないものの実に美しい声。立ち居振る舞いもカッコイイ。女好きの貴公子にぴったり。リゴレット役の青山貴さんの声の威力にも驚いた。扮装をしていない柔和なお顔なのに、まぎれもなくリゴレットの声がするではないか。まだ動きに関して完成していない段階ながら、マッダレーナの藤井麻美さん、モンテローネ伯爵の李宗潤さん、ボルサの近藤洋平さん、マルッロの原田勇雅さんの歌と演技も実に見事。ジルダの森麻季さんはおいでにならなかったが、私はこれまで何度か実演を聴いてその素晴らしさはよく知っている。
きっと11月25日本番は素晴らしい舞台になることを確信した。私はその日、東京で仕事があるために金沢にはいけない! 何とも残念!
2018年11月16日、トリフォニー・ホールで新日本フィルハーモニー交響楽団のコンサートを聴いた。指揮はローレンス・フォスター。曲目は前半にヨーゼフ・モーグのピアノが入ってブラームスのピアノ協奏曲第2番、後半にブラームスの交響曲第2番。
前日にウィーン・フィルを聴いたばかりだったので、はじめのうちは音の豊かさに欠けるのを感じざるを得なかった。正直言って、ウィーン・フィルまでの距離は大きいと思った。とはいえ、先日聴いた上岡敏之指揮のブルックナーの交響曲第9番の演奏の時よりもずっとアンサンブルがよく、精度が高かった。ウィーン・フィルが凄すぎたということだろう。
モーグという若いピアニストが、私の大好きな第2番の協奏曲を弾くので期待したのだったが、ピアノがあまりに一本調子。きっと意識的なのだと思うが、フレーズが変化しても音色を変えようとしない。本人はそこに美を感じているのだろう。が、そうされると、メリハリがなく、単調で硬く聞こえる。ピアノに合わせたのか、オーケストラも音色がずっと同じ調子で構成感がなく、のっぺらぼうになった。第3楽章もせかせかした感じ。もっとじっくりと聴きたかった。
交響曲のほうは協奏曲よりはずっと良かった。フォスターの演奏もあまり音色を変えようとしない。同じような音色を通す。が、音の厚みによって音楽に勢いができ、時に大きく流動するので心に訴えかけてくる。ただ、交響曲もかなり快速で、じっくり聞かせてくれない。もっとオーケストラをコントロールして歌いあげてほしいと思う部分が何か所もあった。とはいえ、最後には十分に盛り上がった。
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