METライブビューイング「サムソンとデリラ」 第二幕に陶酔
札幌に初雪が降った日の翌日(2018年11月21日)、札幌駅ビルのシネコン札幌フロンティアでMETライブビューイング「サムソンとデリラ」をみた。遅くなったが、簡単な感想を記す。
サン=サーンスは好きな作曲家の1人だが、残念ながら日本でオペラの実演に接する機会はほとんどない。METがこの演目を上演し、ライブビューイングで取り上げられると知ってみたいと思ったが、東京での上映期間は時間が合わなかった。仕事で立ち寄った札幌で「サムソンでデリラ」(フランス語読みして「サンソンとダリラ」と呼ぶべき時期に来ていると思う。英語でインタビュするスーザン・グラハムも明らかに「サンソン」「ダリラ」と発音している)が見られることに気付いて、出かけたのだった。素晴らしい上演だと思った。
ただ第一幕は少し退屈だった。古代の宗教世界へと観客を巻き込むことが目的の幕であって、山場がないので致し方ないところだろう。だが、第二幕からは息を飲む凄さ。有名なダリラのアリア以降の場面は、「トリスタンとイゾルデ」の第二幕の二重唱に匹敵する濃密な愛の世界が渦巻くと思った。ただし、サンソン(ロベルト・アラーニャ)とダリラ(エリーナ・ガランチャ)は愛し合っているわけではなく、いわばハニートラップでダリラはサンソンを陥れようとしている。そのエロティシズムとサンソンの心の揺れが音楽に微妙に表現されて、男の1人としてはやるせない。
しかし、それにしてもアラーニャとガランチャの声の素晴らしさ! そしてガランチャの美しさと色っぽさ! スーザン・グラハムも案内の中で語っていたが、ガランチャのあの美しさとあの歌での誘惑に負けない男なんていないだろうと心から思う。しばし、私自身が蠱惑されているかのような不思議な時間を過ごした。
第三幕は圧巻。大スペクタクルとなり、異教の都市が崩壊する。その中で悲惨な状況の中で神を求めるサンソン、サンソンへの愛を振り切れず後ろめたく思うダリラの心の交錯も指揮のマーク・エルダーが細かに描いていく。ロラン・ナウリのしっかりとした声による悪役ぶりも素晴らしい。まるでハリウッド映画のようなリアリティと豪華さで幕を閉じた。
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