レクチャ―コンサート「ロッシーニの魅力再発見」 ロッシーニの世界を満喫した!
2018年11月17日、東京文化会館小ホールで、レクチャ―コンサート「ロッシーニの魅力再発見」を聴いた。水谷彰良氏の解説も大変面白く、演奏もきわめてレベルが高く、まさしく「ロッシーニ再発見」をした。
前半は器楽曲、後半はオペラからのアリアと重唱。ふだん聴き慣れたオペラ・ブッファではない、あまり演奏されることのないロッシーニの音楽を集めたコンサートだ。
器楽曲は、岸本萌乃加、山田香子のヴァイオリン、ピーティ田代櫻のチェロ、白井菜々子のコントラバス、アレッサンドロ・ベヴェラリのクラリネット、西村翔太郎のピアノによる。
弦楽のための6つの四重奏ソナタ第1番、チェロとコントラバスのための二重奏曲第3楽章、クラリネットとピアノのための幻想曲、パガニーニへの一言。四重奏ソナタはCDではときどき聴いている(通勤中に車の中でかけることが多い)が、もしかしたら実演は初めて聴いたかもしれない。初々しい名曲。水谷さんの話によって、12歳の時の作曲とされていたが、実はロッシーニ自身の嘘であって、16歳の時の作曲だと知った。もちろん私もずっと12歳のころの曲だと信じていた。
クラリネットの曲もおもしろかった。とはいえ、器楽曲もおもしろいが、やはりロッシーニはオペラのほうがいい。器楽曲は物足りない。ウィットに富み、楽しいが、やはりベートーヴェンなどと比べるとコクがないし、手抜きの感じがする。
後半は、天羽明惠による「タンクレディ」の「恭しく崇める正義の神よ」からして素晴らしいロッシーの世界が広がる。ロッシーニ歌いとは言えない大歌手だが、ロッシーニを歌っても叙情豊かで、しかも声の力が強い。
「リッチャルドとゾライデ」を歌った小堀勇介のフアン・ディエゴ・フローレスを思わせるような輝かしい高音に驚嘆。見事な技巧。渡辺康もよかった。そして、メゾ・ソプラノの富岡明子にも驚嘆。「マオメット2世」の歌は圧倒的な技巧と見事な声の力に息を飲んだ。日本のロッシーニ歌いもここまでレベルが上がったことに驚いた。バリトンのヴィタリ・ユシュマノフも若いながらしっかりした声で見事。ピアノ伴奏の藤原藍子も躍動感あるロッシーニを作り出していた。
最後の「チェネレントラ」の六重唱も、アンコールの『ギヨーム・テル』のフィナーレも実に素晴らしい。まさしくロッシーニ再発見。もちろん私はロッシーニのオペラ・セーリアもかなり聴いた(DVDは入手できる限りのすべてをみた!)が、やはりオペラ・ブッファのほうが好きだった。が、こうして聴くと、オペラ・セーリアもドラマティックで深みがあって素晴らしい。
センスのいいオヤジ・ギャグを交え、ロッシーニの生涯、そしてその少々ちゃらんぽらんな生き方を浮かび上がらせ、しかも魅力的な曲を構成する水谷さんに感服。素晴らしいレクチャーコンサートだった。
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