ノット+東響の「英雄の生涯」 本格的で鮮烈な演奏!
2018年12月15日、サントリーホールで東京交響楽団の定期演奏会を聴いた。指揮はジョナサン・ノット。曲目は、前半に主席フルーティストの甲斐さちが加わってヴァレーズの「密度21.5」、それに続けて「アメリカ」、後半にシュトラウスの交響詩「英雄の生涯」。素晴らしい演奏だった。
ヴァレーズの曲は、フルートの無伴奏も、その後の「アメリカ」も音が鮮明で、ときどき魂が震えるような広がりを持つ。かなり透明で濁りのない鮮烈な音。ただ、私はヴァレーズの曲にそれほどなじみがない(かなり前、「イオニザシオン」などの入ったレコードだったかCDだったかを1枚だけ持っていて何度か聴いた程度)ので、演奏についてはどうこういえない。
後半の「英雄の生涯」は前半以上に素晴らしかった。
最初、何気なしに、あちこちに音楽が散らばったような始まり方をしたので、「あれ?」と思って聴いていたらぐいぐいと求心的になり、音楽に表情が生まれてきた。とても自由に楽しんでいる雰囲気が伝わってくる。だが、そうであるのに音楽は生き生きとしてアンサンブルはしっかりとまとまっている。
コンサートマスター水谷晃のソロは官能性を抑えたかなり攻撃的な音だった。指揮者の指示もあるのだろうか。特にロマンティックな演奏ではなく、大袈裟に強調するわけではないのだが、音が美しく、鮮烈に明確に音楽が作られていくので、それだけで音楽に表情が生まれて、豊かになっていく。まさに本格的な音楽。トランペットのミスがあったのは残念だったが、全体的にはオーケストラは素晴らしかった。
私はシュトラウス好きだが、もっぱらオペラが好きなのであって交響詩については実は心に響くことは少ない。ところが、後半、何度も感動に震えた。
ジョナサン・ノットの指揮を聴くのは久しぶりだった。東響の首席指揮者に就任してから今回初めて聴く。それにしても、素晴らしい指揮者だと改めて思った。
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