バッハ・コレギウム・ジャパンの「第九」 第1・2楽章に違和感
2019年1月24日、東京オペラシティ・コンサートホールでバッハ・コレギウム・ジャパンによるベートーヴェン「第九」コンサートを聴いた。指揮は鈴木雅明。
もちろん悪い演奏ではない。第4楽章は素晴らしかった。これがマエストロ鈴木雅明の考えるベートーヴェンなのだろう。だが、私は第3楽章まではずっと違和感を覚え続けた。少なくとも私の考えるベートーヴェンとは隔たりがありすぎた。
もちろんピリオド楽器だから音の響きに限界があるということもあるだろう。が、それだけではないと思う。私は素人なので、具体的にどこがどうなのかは言い難いのだが、ベートーヴェン特有の激情的なうねりがない。いや、むしろとってつけたような激情があるというほうが正しいかもしれない。盛り上がっていくのだが、それが機械的で一本調子になってしまうのを感じた。とりわけ、第1・2楽章はそのように感じた。ベートーヴェンはもっと多様な人間感情や思想が盛り込まれているように思うのだが、それが十分に描かれていないように思えた。
第3楽章は第1・2楽章よりもずっとよかった。音と音の絡みが美しく描かれていた。が、ここでもやはり多様な思いが十分に伝わらなかった。
第4楽章になって声楽が入ってからは俄然よくなった。まずソリストたちが素晴らしい。とりわけソプラノのアン=ヘレン・モーエンの美しく芯の強い声に圧倒された。アルトのマリアンネ・ベアーテ・キーラントもテノールのアラン・クレイトンもバスのニール・デイヴィスも見事。そして、もちろんバッハ・コレギウム・ジャパンの合唱も素晴らしい。
声が入ると、さすがBCJというべきか、広がりが生まれ、厚みができ、音楽に深みが出る。ともあれ、最後には感動した。
鈴木雅明はもちろん尊敬する指揮者の一人なのだが、少なくともベートーヴェンの器楽曲については、私は十分に納得できない・・・というのが今日の偽らざる感想だった。
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