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三宅理恵ソプラノ・リサイタル 5拍子揃った名歌手!

 2019222日、紀尾井ホールで三宅理恵ソプラノ・リサイタルを聴いた。素晴らしかった。感動した。

 2010年、多摩大学の私のゼミが主催してHAKUJU HALLでコンサートを開いた時、新居由佳梨さん、江島有希子さんとともに三宅理恵さんにも演奏していただいた。まだ若手だった三宅さんは快く私たちの依頼に応じてシューベルトの「鱒」「魔王」「糸をつむぐグレートヒェン」やジブリの歌を歌ってくださったのだった。素晴らしい歌だった。そして、今回、初めてのリサイタルを聴いて、今や押しも押されもしない日本最高のソプラノの一人になっておられたのを改めて感じた!

 最初はパーセルの「妖精の女王」の「聴け、大気はこだまして」。音程の正確な本当に美しい透明な声。ヴィブラートが少なく、自然で清澄。しかも、完璧に声をコントロールして、歌のニュアンスも素晴らしい。時にホール全体に声を響かせる。モーツァルトの「すみれ」でも、清澄でニュアンス豊かな歌唱を聞かせ、ヴォルフの「澄まし娘」や「心変わりした娘」では、もっと軽妙で、もっと深い心の内を聴かせてくれた。そして、ドビュッシーやシャミナードの歌曲では、美しいフランス語の響きが見事。三宅さんが言葉を大事にしていることがとてもよくわかる。聞き取りやすいフランス語。言葉こそが歌曲のエッセンスだということがとても納得できる。もう少しアクが強くていいと思うが、クセのないきれいな声が三宅さんの最高の持ち味だと思う。

 後半には現代曲が中心になった。前半では、軽めの声の、いわばスーブレット風の声で軽快に聴かせてくれたのだが、後半になると、もっと奥深い世界が展開される。藤倉大の「世界にあてた私の手紙 (ソプラノ版 世界初演)では、様々な表現の実験をしている感じ。ハンドリーとプレヴィンとゴードンの3人の作曲家がエミリー・ディキンソンの詩「朝は本当にあるの?」につけた歌も、それぞれの作曲家の個性を描き分けて、とてもおもしろかった。知的で繊細で清潔。

 プログラムの作り方も見事。三宅さんの様々な魅力を聴かせてもらえた。しかも、だんだんと表現の幅が広がり、清澄な声から徐々に、もう少し屈折した音楽になっていく。その展開の仕方も見事。

そして、最後はグノーの「ロメオとジュリエット」の「ああ、なんという戦慄が」。アンコールには同じ「ロメオとジュリエット」の第一幕のアリア。これまでの歌曲的なアプローチと違って、オペラとしてのドラマティックな三宅さんを聴かせてくれた。このような音のドラマの作り方も見事。何度か心が震えた。

ピアノは川島基。突然の変更だったようだ。タッチの美しい、とても感じのよいピアノ伴奏だった。シャミナードの歌曲には永井由比さんのフルートが入ったが、それもとてもきれいだった。

これから、もっともっと歌曲のリサイタルをしてほしい。これほど美しい声と正確な音程といくつもの言語を美しく歌い分ける知性と様々なニュアンスを歌い分ける表現力と、そしてこれほどチャーミングな容姿を持ち合わせる歌手は世界にもほとんどいない。まさに五拍子揃った名歌手だと思った。

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