ベルチャ弦楽四重奏団 メンデルスゾーンの悲しみを最高のアンサンブルで再現
2019年2月1日、紀尾井ホールでベルチャ弦楽四重奏団の演奏を聴いた。とてつもない演奏。こんな凄まじい弦楽四重奏団は初めて聴いた。
曲目は初めにモーツァルトの弦楽四重奏曲第22番「プロシャ王第2番」とバルトークの弦楽四重奏曲第6番、後半にメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第6番。
ともかくアンサンブルが驚異的。そもそも音が絶妙の美しさ。第一ヴァイオリンのコリーナ・ベルチャの音程のよい繊細でやわらかい音が素晴らしい。弱音のニュアンスにうっとりする。そして、第二ヴァイオリンのアクセル・シャハーが絶妙に第一ヴァイオリンに重ねる。同じ音色で、同じニュアンスで、そして音色の変化も同時に起こる。ヴィオラのクシシュトフ・ホジェルスキーも、そしてチェロのアントワーヌ・レデルランも言葉をなくすようなアンサンブルをなす。確かに噂通り、この団体は弦楽四重奏曲のあり方を変えるように衝撃力を持っている。
ぴたりと合った音程のよい音、しかもそれが豊かさをと繊細さを持っている。そのうえ、きわめて現代的に音楽が展開する。四人ともタブレットに楽譜を写して演奏。足でページを更新しているようだ。そのような現代的なスタイルにぴったりの演奏。
モーツァルトは限りなく繊細。柔らかい音であえて珠玉のものを大事に扱うように静かに演奏する。バルトークはもっと鋭く、切れよく、しかも深く沈潜する。
メンデルスゾーンはユダヤ人として差別を受け、深く傷つき激しい悲しみを抱きながらも、それを押し隠し、古典的で育ちのよい音楽を書き続けていた。ところが、ベートーヴェンの後期の弦楽四重奏曲の影響を受けて、自らの哀しみのすべてを弦楽四重奏曲の中に叩きつける。その典型的な曲が第6番の弦楽四重奏曲だ。そうした哀しみ、怒り、心の中の屈折をベルチャ弦楽四重奏団は最高のアンサンブルでニュアンス豊かに再現する。メンデルスゾーンの悲しみや怒りが渦巻く。
アンコールはベートーヴェンの弦楽四重奏曲第13番第5楽章「カヴァティーナ」とショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第3番の第3楽章。「カヴァティーナ」は緻密で緊張感にあふれる演奏。ショスタコーヴィチは魂の怒りをたたきつけるような強烈な演奏。ただただ圧倒された。
30年以上前になるだろうか、アルバン・ベルク四重奏団の演奏をCDで聴いて、「弦楽四重奏の演奏法がこれまでと変わった!」と思った。それと同じことが、今、ベルチャ弦楽四重奏団によって起こっているような気がする。
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