フィルハルモニア多摩のオペラ「幽霊屋敷」 見事な演奏!
2019年2月24日、立川のたましんRISURUホール大ホールてスタニスワフ・モニューシュコ作曲のオペラ「幽霊屋敷」(日本初演・演奏会形式)を聴いた。
もちろん私は初めてこのオペラを聴いた。その存在も知らなかった。作曲者名も知らなかった。かつて今村能指揮によりフィルハルモニア多摩の演奏するフランス音楽を聴いて驚嘆、その後、何度か多摩大学の私のゼミが主催するコンサートにこのオーケストラの方々の演奏をお願いしたことがある。指揮者の今村能さんがポーランド音楽を精力的に紹介なさっていることはよく知っていたが、これまでなかなか時間が合わなくて、聴く機会がなかった。今回、こんな珍しいオペラを上演されるとあっては、何が何でも聞きたいと思ったのだった。なお、多摩フィルハルモニア協会と東京室内歌劇場の主催による演奏で、日本・ポーランド国交樹立100周年記念とのこと。
モニューシュコはワーグナーと同じ時代を生きた作曲家で、ポーランドではこのオペラはとても人気があるという。スメタナのオペラをもう少し古典的にした感じ。とてもおもしろいオペラだと思った。ストーリーもわかりやすいし、話の展開に説得力がある。初めて聴いてもまったく退屈しないし、とてもきれいな旋律がしばしば出てくる。オーケストレーションもしっかりしている。第四幕の合唱など、大きく盛り上がって素晴らしかった。
演奏もかなり高レベルだと思った。とりわけ、ハンナを歌う津山恵さんがやはり声の伸びもコントロールも素晴らしかった。そのほか、ステファンの園山正孝とダマズィの西岡慎介に私は強く惹かれた。そのほかの歌手たちもとてもしっかりと歌った。
フィルハルモニア多摩も大健闘。ところどころで心細い音になることはあったが、全体的にはしっかりした音でオペラを盛り上げた。オーケストラの力は管楽器に歴然と現れるが、木管、金管ともにとてもきれいな音を出して、一流の都内のオケに引けを取らないと思った。コンサート・ミストレスのソロヴァイオリンも見事だった。
そして、日本におけるポーランド音楽の第一人者であるマエストロ今村の的確な指揮ぶりも特筆に値すると思う。この大曲を最後まで緊張感を持って演奏。演奏会形式でありながら、しっかりとオペラの世界を作り上げていた。いや、そもそもこのオペラを取り上げて演奏してくれたこと自体、その功績に圧倒される。
ただ私が不満に思ったのは、ポーランド人と思しき人々のマナーだった。7、8人のポーランド人招待客らしい人が中央の席に並んでいたが、おしゃべりをしたり、演奏中にスマホで動画を撮ったり、スマホでメールを確認したり、スマホで何かを書いたり、第二幕ではコーヒーを飲みながら聴いていたし、シャッター音を立てて写真を撮っていた。じっくりと聴いている様子はまったく見られなかった。子どもも二人いて絵を描いたり、お菓子を食べたりしていたが、それはやむを得ないとしても、それと大差のないことを大人たちがするのにはあきれてしまった。せっかくポーランドの音楽が演奏されているのに、このような態度をとるなんて! これがポーランドの文化のレベルなのだろうか。とても残念だった。私は第二幕まで、ポーランド人たちのすぐ後ろで聴いていたが、いらいらするので、第三幕から別の席に移って聴いた。
ともあれ、このような珍しいオペラを見事な演奏で聴けたことにとても満足した。
| 固定リンク
「音楽」カテゴリの記事
- METライブビューイング「ドン・カルロス」 フランス語版の凄味を感じた(2022.05.17)
- バーエワ&ヤノフスキ&N響 苦手な曲に感動!(2022.05.14)
- Youtube出演のこと、そしてオペラ映像「パルジファル」「シベリア」(2022.05.10)
- ヤノフスキ&N響 「運命」 感動で身体が震えた(2022.05.08)
- オペラ映像「イェヌーファ」「炎の天使」「魔弾の射手」(2022.05.01)
コメント