川久保賜紀&小菅優のブラームス 第3番のソナタに感動
2019年3月11日、紀尾井ホールで川久保賜紀&小菅優ブラームス ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会を聴いた。
前半のソナタの第1番と第2番については私は少し不満だった。小菅優のピアノは音の粒立ちも見事、潤いがあり、しなやかさがあり、躍動感があってしっかりとヴァイオリンを支えていた。ヴァイオリンももちろん悪くないと思った。が、美しい響きを聴かせてくれるわけでもなく、ダイナミックな世界を繰り広げるでもなく、抒情を醸し出すわけでもなく、私には何をしようとしているのかよくわからなかった。注目の二人の演奏にしては少々地味だと思ったのだった。
が、後半の第3番はとてもよかった。第1楽章の出だしから、前半と異なってダイナミックでスケールの大きな演奏になった。川久保は自己主張の強い芯の強い音によってブラームスの心の中をえぐろうとし、小菅はしなやかに、そしてダイナミックにそれを支える。二人の音楽性はかなり異なると思うが、それがぴたりと合って、ブラームスの世界を作り出していった。川久保のヴァイオリンは高揚していくが、小菅のピアノとともにヒステリックにならず、構成感もしっかりしている。第4楽章は素晴らしかった。やはり、第3番は曲自体が素晴らしいということも言えるのだろうが、とてもよい演奏だと思った。
アンコールはシューマンのロマンス第2番と、FAEソナタのブラームスの作曲になる第3楽章スケルツォ。ただ、私はこの2曲の演奏にあまり感動できなかった。また前半と同じような不満を感じた。第3番のソナタのような深い世界は現れず、中途半端に思えたのだった。スケルツォについてはもっと躍動してほしいと思ったのだった。
もちろん悪い演奏ではない。が、私はもっともっと感動することを期待していた。ちょっとだけ期待外れの気持ちを抱いて三日月の下を歩いて帰った。
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