ウルバンスキとエーベルレ 若い才能に圧倒された
2019年3月25日、サントリーホールで東京交響楽団定期演奏会を聴いた。指揮はポーランド出身の若き指揮者クシシュトフ・ウルバンスキ。曲目は前半にヴェロニカ・エーベルレのヴァイオリンが加わってモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」、」後半にショスタコーヴィチの交響曲第4番。エーベルレも若い女性。
前半はウルバンスキはちょっと控えめ。エーベルレの最初の音に驚いた。弱音が素晴らしい。聴くものを引き付ける。音程の良い美しい音で生き生きとした音楽を作っていく。しかも、第2楽章はしっとりと、まるで晩年のモーツァルトのように深みのある音楽を築いた。ところどころにカデンツァ(というか、正確には「アインガング」というらしい)が入る。アメリカのピアニスト、ロバート・レーヴィンの作だという。鮮烈でよかった。ヴァイオリンのアンコールはプロコフィエフの無伴奏ヴァイオリン・ソナタより。これも音程の良い勢いのある演奏。
後半のショスタコーヴィチはウルバンスキの世界が炸裂した。1982年生まれだというから、まだ30代。切れがよく、バランスも良く、このヒステリックで狂気じみており、しかも知的で抒情的で複雑な音楽を見事に構成していく。音が澄んでいるし、しかも重層的。東響のメンバーも素晴らしい。管楽器の美しさに驚いた。
ただ、私はマーラー嫌いの私にはこの曲はあまりにマーラー臭くて、素直についていけなかった。ショスタコーヴィチの交響曲の中では最も苦手な部類に属す。そんなわけで、演奏のすごさに圧倒されながら、マーラーを聴くときのような居心地の悪さを感じたのだった。
が、それにしてもこの指揮者、おそるべし! エーベルレも素晴らしい。若い二人に圧倒された。
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