藤原歌劇団「フランチェスカ・ダ・リミニ」 良い上演だったが、少々退屈した
2019年3月27日、テアトロ・ジーリオ・ショウワで藤原歌劇団公演メルカダンテ作曲のオペラ「フランチェスカ・ダ・リミニ」をみた。
チャイコフスキーの幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」は中学生のころにレコードでよく聴いていたので、このタイトルにはなじみがあるが、メルカダンテのこのオペラはもちろん初めてみる。メルカダンテについても、ロッシーニと同時代に活躍していた作曲家としてものの本で読んだくらいの知識しかない。
歌手陣は充実していた。とりわけフランチェスカを歌うレオノール・ボニッジャとパオロのアンナ・ペンニージは素晴らしかった。ボニッジャは、音程のいいきれいな声。ペンニージも音程がよく、声に深みがある。
ランチョットのアレッサンドロ・ルチアーノは美声だが、声が弱く、悪役には迫力不足。日本人歌手たちは健闘。グイードの小野寺光、イザウラの楠野麻衣、グエルフォの有本康人、いずれもしっかりした声と演技。合唱は藤原歌劇団合唱団、オーケストラは東京フィルハーモニー交響楽団。とてもよかった。
ただ、実は私はかなり退屈だった。メルカダンテの曲自体、あまりに平板。きれいな旋律があり、ロッシーニのようなおもしろい展開がある。なかなかいい曲。ドニゼッティ風なところもある。だが、それなのに、盛り上がらない。台本にも難がありそう。夫の弟を愛してしまって、夫に死に追いやられるフランチェスカの悲劇を描く。「ペレアスとメリザンド」によく似たストーリー。だから、ドラマティックなはずなのに、いつまでも同じことを歌ってなかなか話が進まない。ずっと同じ雰囲気。メリハリがない。ドラマ的な展開にならない。もっと端折るところがあってよいのに、話が少しずつ進んでいく。このオペラがあまり上演されないのも理由があってのことだと納得。
平板になったのには、指揮のセスト・クワトリーニにも責任があるのかもしれない。普通に考えれば盛り上げようとするところなのに、そうしない。意図的にロッシーニ風になるのを避けたのだろうか。あるいは、そのような盛り上げを許さないような楽譜なのだろうか。私としては、退屈にならないようになんとかしてほしかった、
演出のファビオ・チェレーザは、かなり穏当。歌だけだと退屈になるとわかっていると見えて、歌手たちの周りでダンサーが踊る。踊りに無関心な私としては、これは邪魔だった。もっと演奏面で退屈しないようにしてほしいと思った。
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コメント
樋口様
度重なるコメントで申し訳ありません。
「フランチェスカ・ダ・リミニ」の公演は目にしていましたが、てっきりザンドナーイのオペラだろうと思っていました。何年か前に首都圏オペラという団体がやりましたので、それをやるのかなと思っていました。メルカダンテにそういうオペラがあるんですね。
メルカダンテは、私には懐かしい名前です。大学時代に友人がメルカダンテのフルート協奏曲の第3楽章をカセットテープに入れてくれました。それを何度も聴いていた時期があります。フルートはランパルだったと記憶しています。
投稿: Eno | 2019年3月28日 (木) 22時11分
Eno 様
コメント、ありがとうございます。
メルカダンテの曲を私は初めて聴いたのですが、そうですか。ザンドナーイのオペラも聴いたことがありません。確かに、「フランチェスカ・ダ・リミニ」のチラシを見た覚えがありますね。メルカダンテの曲をもう少し聴いてみたいと思いました。
投稿: 樋口裕一 | 2019年4月 1日 (月) 08時42分