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カンブルラン 読響常任指揮者としての最後の「幻想」 感動した!

 2019324日、東京芸術劇場で読売日本交響楽団の「日曜マチネシリーズを聴いた。指揮はシルヴァン・カンブルラン。カンブルランの常任指揮者としての最後のコンサート。曲目は、前半にベルリオーズの歌劇「ベアトリスとベネディクト」序曲と、ピエール=ロラン・エマールのピアノが加わってベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番、後半にベルリオーズの「幻想交響曲」。素晴らしい演奏。感動した。

 カンブルランらしく緻密で色彩的。しかも、無駄なものがなくきびきびしている。誇張なしに音楽の本質を取り出し、オーケストラの良さを引き出して音楽にしていく。本当にすごい指揮者だと思う。

 エマールのピアノもよかった。とりわけ第2楽章の繊細さは格別。カンブルランと音楽的に近いと思う。ただ逆にいえば、指揮者とソリストの激しいせめぎあいのようなものは感じられなかった。素晴らしい演奏だったが、予想した通りに進んでいった気がする。ピアノのアンコールが演奏されたが、なんだかよくわからない曲だった。後で掲示を見たら、クルターグという作曲家の「遊戯 第6集より」とのこと。

 後半の「幻想」はまさに名演。ただ好き嫌いはあるかもしれない。あまりおどろおどろしくない演奏。スマートで形式感があり、品格のある「幻想」。ドイツ音楽的な感じがする。なりふり構わずに鳴らしまくるのでなく、知的にコントロールされている。オーケストラも素晴らしい。とりわけ、木管楽器が美しかった。私はこのような演奏が大好きだ。

 私は「幻想」を聴くと、第3楽章をどう演奏するかが気になる。誰が演奏しても退屈してしまう楽章だ。さすがカンブルランというべきか、精妙な音で何事かが起こっている雰囲気を高めていく。牧歌的でありながらも、不気味。特に大きな事件(つまり、「幻想」のストーリーからすると殺人?)が描かれているわけではなさそうだが、田園風景の中でただならぬ雰囲気がある。なるほどベルリオーズはこのような意図でこの楽章を作ったのか!と納得させるような演奏だった。そして第4・5楽章も、躍動し、魑魅魍魎の世界でありながらも随所に繊細な美しさにあふれた世界が出現した。

 演奏後、オッフェンバックの「地獄のオルフェウス」のカンカン踊りの部分が、おそらくはオーケストラ団員の発意で演奏され始めた。「ありがとう、マエストロ・シルヴァン・カンブルラン。日本でまた会いましょう」という横断幕がだされ、何人かの団員が踊り、カンブルランも指揮をしながら踊り・・・といった楽しくも感動的な感謝のパフォーマンスが行われた。観客も大喝采。

 私もカンブルランの指揮する読響の演奏を聴くたびに深く感動した。そして、カンブルランが巨匠であることを痛感したのだった。最後のコンサートを聴けて本当に良かったと思った。

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コメント

私も会場にいました。いい卒業式でしたね。あんな形で卒業できるなんて、稀有なことだと思いました。

投稿: Eno | 2019年3月25日 (月) 20時28分

Eno様
コメント、ありがとうございました。
あの場におられたんですね。興味深くブログを拝見しました。
私は「現代音楽」にはあまり共感しませんので、カンブルランのシェーンベルクやメシアンなどは遠慮していたのですが、聴けばよかったかな?と今更ながら後悔しています。
ブログに書かれていた黒井千次と古井由吉、以前はよく読みました。とりわけ古井は大好きでした。最近はまったく読んでいないことに気づきました。読みたくなってきました。

投稿: 樋口裕一 | 2019年3月26日 (火) 23時09分

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