METライブビューイング 「ワルキューレ」 声を上げて泣いた
東銀座の東劇でMETライブビューイング「ワルキューレ」をみた。言葉をなくす凄さだった。第三幕では、私は声を上げて泣いた。
まず第一幕への前奏のオーケストラの音に驚いた。すさまじい緊迫感。スピルバーグの映画のジョーズが近づいてくるときのようなすごみがある。低弦が強く、すべての音が生きている。フィリップ・ジョルダンの音楽性に痺れた。アルミン・ジョルダンの親の七光り指揮者どころでなく、世界を代表するワーグナー指揮者になっていた。芯の詰まった強い音でうねり、起伏して、奥深くドラマティックな世界を作っていく。
これまでと同じルパージュの演出だが、少しも古びていない。木の板が動き、躍動感があり、ものまでも生命を持つかのような神話世界を作り出す。
歌手陣も充実している。ジークフリートのスチュアート・スケルトンは美しい伸びのある声、ジークリンデのエヴァ=マリア・ヴェストブルックもまたのびやかで、ジークリンデらしい可憐さ、フンディンクのギュンター・グロイスベックはまさしく心の狭い悪役を強い声で歌う。この三人の声で歌と演技でうちに緊迫するやり取りを描き出す。この三人のこのところの充実ぶりは素晴らしい。
ブリュンヒルデのクリスティーン・ガーキーも女性的な潤いのある声ながら、低音に迫力があり、豊かな声を出す。ヴォータンのグリア・グリムスリーも豊かな声量で人間臭いヴォータンを描き出す。フリッカのジェイミー・バートンも迫力ある声。一つとして穴がなく、圧倒的な神話世界を作り上げていく。
第三幕は昔から感動していた。かつては形而上学的深みに触れて感動していた気がする。が、このごろ、ブリュンヒルデへの告別を歌うヴォータンの歌に、愛する娘を手放す親の気持ちを重ねて涙を流すようになった。とりわけ、今度は娘が私と同じ姓を名乗らなくなって初めてみる「ワルキューレ」だった。感極まって泣き出すしかなかった。
大変満足した。
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