リムスキー=コルサコフは大オペラ作曲家だ!
リムスキー=コルサコフがたくさんのオペラを作曲していることは、ずっと前から知っていた。「金鶏」というオペラのタイトルは高校生の頃に知った。だが、「たかがリムスキー=コルサコフ」と思って、これまでみたことがなかった。先日、「見えざる町キーテジと聖女フェヴローニャの物語」の映像を初めてみて、なかなか良いオペラだと思ったので、ついでに、いくつかのオペラ映像をみて、びっくり! リムスキー=コルサコフは大作曲家だ!と思った。少なくとも、オペラに関しては大作曲だといって間違いないと思う。
その昔(つまり、中学生のころ)、「ドン・ファン」などを聴いて二流の作曲家だと思っていたリヒャルト・シュトラウスの「ばらの騎士」「サロメ」を知って圧倒されたときと同じ経験を、それから50年以上たってから再び味わった。
簡単な感想を書く。
リムスキー=コルサコフ 「金鶏」2016年 ベルギー モネ劇場
ローラン・ペリーの演出のおかげでいっそう素晴らしくなっている面があるのかもしれないが、作品そのものが素晴らしい。プロコフィエフの「三つのオレンジへの恋」やショスタコーヴィチの「鼻」を思わせる。プーシキンの原作だが、まるでゴーゴリのよう。不気味で喜劇的でブラックユーモアにあふれている。音楽も先鋭的。これがあの「シェエラザード」の作曲家の作品とは思えない!
ドドン王(パヴロ・フンカ)は国家の危機を告げる黄金の鶏(シェヴァ・テホヴァルの歌)を占い師(アレクサドル・クラヴェツ)から手に入れるが、結局、二人の息子を失い、シェマハの女王(ヴェネラ・ジマディエーヴァ)の色香に負けて、事実上、王国を乗っ取られ、最後には鶏に殺されてしまう。
歌手たちもそろっているし、なにはともあれローラン・ペリーの演出が楽しい。動きがあり、リズムがあり、音楽がある。
「金鶏はいったい何を象徴するのか?」というような疑問も含めて、とても興味深い。いや、それ以上に、モダニズム風の音楽が圧倒的におもしろい。
リムスキー=コルサコフ 「金鶏」2014年 マリインスキー歌劇場
モネ劇場の公演があまりにおもしろかったので、マリインスキー劇場のBDも購入してみた。これもおもしろい! 1909年のオペラだというが、時代を先取りしている。甘ったるいところがなく、乾いたユーモアとこの上なく色彩的なオーケストレーション。そうした音楽で寓話的なドタバタ劇が展開される。
ユーリ・アレクサンドロフの演出がとてもおもしろい。こちらはあまりブラックユーモアは感じないが、権力者に対する揶揄、ドタバタ感は見事。舞台の色彩感も圧倒的。まさしく万華鏡の世界。舞台全体が万華鏡のように色とりどりの別世界。飽きることなく、最後までワクワクしてみることができる。
歌手陣もドドン王のウラジーミル・フェリャウエル、占星術師のアンドレイ・ポポフが素晴らしい。シェマハの女王を歌うアイダ・ガリフューリナは少々音程が怪しいが、まあ、これは不可思議な世界の女性なので、それはそれでさほど気にならない。
ソリストたちも合唱団も、そして黙役の人も、登場する女性たちはほとんどがとびっきりの美女ぞろい。ロシアに美人が多いことは承知しているが、それにしても全員が美人ということはないだろうから、きっとこれはあえてきれいどころを集めているのだろう。まさに夢幻の世界。幻惑されて2時間ほどを過ごすことができる。
それにしても、オペラ作曲家としてのリムスキー=コルサコフの力たるやすさまじい。オペラ好きと公言しながら、これまでこの作曲家の真価を知らなかったことを恥じる。
リムスキー=コルサコフ 「皇帝サルタンの物語」2013年 マリインスキー劇場
魔女のたくらみによって、皇帝サルタンは妻子を誤解して、捨て去ってしまう。が、妻子は生き延び、助けた白鳥の恩返しによって皇帝と再会し再び幸福を得る。そのようなおとぎ話が絶妙の音楽によって展開される。いやあ、リムスキー=コルサコフの腕前たるや、すさまじい。オーケストレーションは見事だし、メリハリのつけ方も堂にいっている。本当によくできたオペラだ。
アレクサンドル・ペトロフの演出もとてもおもしろい。原色をふんだんに使った民族衣装も美しく、アニメを使ったストーリー紹介も気が利いている。まさにリムスキー=コルサコフの音楽にふさわしい色彩性。歌手陣も充実している。皇帝サルタンのエドヴァルト・ツァンガはまさに容姿も含めて皇帝にぴったり。王妃のイリーナ・チュリロワグヴィドン、王子のミハイル・ヴェクア、白鳥の王女のアルビーナ・シャギムラトワはいずれもとてもしっかりとした声が魅力的。三人の悪役も演技、声ともにとてもいい。そして、なによりもワレリー・ゲルギエフの魔法のような棒さばきも見るものを引き付ける。
ところで、今日は2019年5月2日。10日間の連休のほぼ真ん中の日にして、元号が令和に変わって2日目。私は50年ほど前からもっぱら西暦を使用しているので、さして意識の上での感慨はない。二人の子どもたちが昭和の最後の年と平成の最初の年の生まれだったので、計算がしやすかったが、これから、子どもの年齢を思い出しにくくなるだろう。いや、子どもの年だけでなく、あれこれと年代が計算しにくくなるだろう。それを面倒に思う。
明後日からラ・フォル・ジュルネ東京が始まる。楽しみにしている。ただ、昨年までのように朝から夜まで音楽を聴き続ける体力がまだ残っているかどうか、少々心配。
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コメント
「金鶏」は未だに語り草となっている、スヴェトラーノフが1989年にボリショイオペラの日本公演と演奏したものが印象に残っています。
この公演はDVDにもなっているので今でも見る事ができるのが嬉しいです。
「見えざる町」はムラヴィンスキーがこよなく愛し高く評価していた曲としても知られていますが、こちらは日本で演奏されたことがあるのでしょうか。ロシアあたりでは比較的演奏はされているらしいとのことです。
ラ・フォル・ジュルネ。もう明日からですが、今回はコンサートだけでなくソムリエもされるので大変かと思います。天候や気温も激変しそうなので、体調には充分ご注意ください。
投稿: かきのたね | 2019年5月 2日 (木) 13時22分
かきのたね様
コメントありがとうございます。スヴェトラーノフの金鶏は、先日注文しましたので今日あたり到着するだろうと思っています。見るのが楽しみです。
投稿: 樋口裕一 | 2019年5月 5日 (日) 08時40分
かきのたね様
La Folle Journéeのソムリエ、かなり大変でしたが、ともあれ楽しむことができました。勉強不足も自覚させられました。
投稿: 樋口裕一 | 2019年5月 5日 (日) 08時45分