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2019年ラ・フォル・ジュルネ東京の初日

 2019年のラ・フォル・ジュルネ東京が始まった。初日(53日)、私は朝の10時過ぎから、夜の10時半ころまで、途中、2時間ほど「ソムリエ」として、お客さんからの質問に答える仕事をしながら、6つのコンサートを聴いた。なお、「ソムリエ」を務めたのは初めてだった。音楽評論家や音楽ジャーナリストが務める仕事を突然仰せつかり、いくつかの質問にはたじたじとなったが、ともあれ無事に終えることができた。

 コンサートについて簡単な感想を書く。

 

・エルメス弦楽四重奏団

バルトークの弦楽四重奏曲第4番 ドヴォルザークの弦楽四重奏曲第12番 「アメリカ」

 

 話題のカルテットを今年の最初のコンサートに選んだ。

 朝一番の演奏であるせいか、初めのうち勢いがなく、合わせているだけの感じ。バルトークの第3楽章あたりから調子が上がってきた。とてもアンサンブルのよいカルテットだと思う。スリムでシャープ。ただ、それ以上のものを感じない。

 バルトークにはもっと民族性があっていい。ドヴォルザークにはもっと叙情性があっていい。あえてそれを排除しているのかもしれないが、それにまさる魅力を出しているとは思えない。

 ともかく、まだ会場が温まっていない。もう少ししてから、またこのカルテットを聴きたい。

 

・ジェラール・コセ(ヴィオラ) タタルスタン国立交響楽団 アレクサンドル・スラドコフスキーの指揮でベルリオーズの交響曲「イタリアのハロルド」

 

 とてもいい演奏。タタルスタン国立交響楽団を初めて聴いたが、切れがあるし、小回りも利くし、いいオーケストラだと思った。さすがに金管楽器に威力がある。指揮も、的確に盛り上げ、構成もしっかりしている。力で押しまくることもない。コセはもちろん手慣れた演奏。繊細でダイナミックなベルリオーズの世界を堪能できた。

 

・ボリソグレブスキー(ヴァイオリン)、クニャーゼフ(チェロ)、ベレゾフスキー(ピアノ)チャイコフスキーのピアノ三重奏曲イ短調「偉大な芸術家の思い出に」

 

  出演者はサプライズだとのことで、登場するまで、少なくとも私は誰なのか知らなかった。若手演奏家たちが現われるとばかり思っていたが、出演者が出てくるのを見てビックリ。ボリソグレブスキーとクニャーゼフとベレゾフスキーだった! ロシアを代表する超一流のベテランたち。

 素晴らしい演奏だった。ただ三人の音楽性はかなり異なる。繊細で高貴なボリソグレブスキー、ロマンティックで我の強いクニャーゼフ、バリバリ弾くベレゾフスキー。が、見事に噛み合う。フーガの箇所など圧巻。最後も悲痛なほどに追悼の気持ちが高まった。

 

Cor di memoria 地中海のポリフォニー  タヴァーニャ(コルシカの男声声楽アンサンブル)

 

 いわゆるクラシックの発声ではない。民謡調の発生といってよいだろう。10人程度の男性(数えるのを忘れていた。もしかしたら、8人くらいかもしれない)。歌い出しも歌い終わりもピタリとは合わない。むしろ、そこがおもしろい。田舎の味わいがある。

  歌詞は配られたが、いったいどこが歌われているのかわからず、どんな曲かもわからなかった。リーダーがフランス語で説明し、通訳がついたが、それを聴いても、よく伝わらなかった。どうやら、伝統的な曲と、近年に作曲された曲が織り交ぜられて演奏されたようだ。私の席がすみっこで歌手たちも通訳の方も見えなかったせいもあるのかもしれないし、私がぼんやりしていたせいかもしれないが、結局、よくわからないままだった。

 

 

アナスタシア・コベキナ(チェロ)、パロマ・クーイデル(ピアノ)

  ブーランジェのチェロとピアノのための3つの作品、ヒナステラの「パンペアーナ」第2番、フォーレの「ゆりかご」、ブラームスのチェロ・ソナタ第2番

 素晴らしい演奏だと思った。コベキナはとてもスケールの大きなチェロを弾く。音程がよく、思い切りがよく、音が明快。細かなニュアンスもある。そして、それにもまして私はピアノのクーイデルの音に惹かれた。ニュアンス豊かなしっかりした音だ。一つ一つの音がとても美しく、知的に構成されて、チェロともピタリと合う。

 ブーランジェの曲もおもしろかったが、やはりブラームスのソナタが圧倒的だった。メロディがきれいに浮かび上がって、理に適って展開されていく。小気味いい。しかも、チェロが十分に歌い、ピアノがしっかりと支えている。この二人の演奏をもっと聴きたい。

 

ディーヴァ・オペラによるモーツァルト 「後宮からの逃走」 

 ピアノ伴奏によるオペラ。合唱部分はカットされている。字幕はつかないが、歌詞が配布された。

 ディーヴァ・オペラというのは室内歌劇の集団らしい。全体的にとてもレベルが高い。容姿、演技ともに、役柄にぴったりの歌手陣だった。ピアノはブライアン・エヴァンス。ずっと弾きっぱなしで大変だっただろう! 明快な音でワクワクした音楽を作りだしていた。

 歌手陣の中で最も声楽的に安定していたのは、オスミンを歌ったマシュー・ハーグリーヴズだろう。低音がちょっと弱かったが、この役はやむを得ない。コンスタンツェ役のガブリエラ・ キャシディはとてもきれいな声。ただ、ヴィブラートが強いのが少し気になった。ベドリッロのリチャード・ダウリングとブロンデ役のバーバラ・ コール・ウォルトンはともにきれいな声だが、ちょっと声量が不足。ベルモンテのアシュリー・カトリングは不調だったのかあまり声が出ていなかった。

 とはいえ、このくらい歌ってくれれば十分にモーツァルトを堪能できる。ワクワクしながら最後まで楽しめた。

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