ボローニャ歌劇場「セヴィリアの理髪師」 とてもよかったが、それほど感動はしなかった
2019年6月22日、神奈川県民ホールでボローニャ歌劇場公演「セヴィリアの理髪師」をみた。
歌手陣は全体的にとても充実していた。アルマヴィーヴァ伯爵を歌うのはアントニーノ・シラグーザ。安定した輝かしい声でしっかりと歌う。第二幕終盤の歌は素晴らしかった。フィガロはロベルト・デ・カンディア。豊かな声で自由に歌う。やはりこの二人が最も充実している。
ロジーナのセレーナ・マルフィもきれいな声で音程もよいのだが、もっと爆発的な声の力が欲しいと思った。ドン・バルトロのマルコ・フィリップ・ロマーノも安定しているし、芸達者だが、もう少し声に伸びがほしいと思った。ドン・バジーリオのアンドレア・コンチェッティとベルタのラウラ・ケリーチももちろん悪くはないが、少し余裕不足を感じた。
とはいえ、繰り返すが、歌手陣に私はほとんど不満はない。よくを言い出せばきりがないが、十分に感動できる声だった。
私が不満を覚えたのは、フェデリコ・サンティの指揮だった。ところどころ停滞するのを感じた。ロッシーニらしい躍動がないし、わくわく感がない。バランスが壊れる場面もあったように思う。
フェデリコ・グラッツィーニの演出は、かなり穏当で伝統的だと思う。バルトロが銃をもって狩りをし、誤解したロジーナが銃で侯爵を脅す場面などあるが、そこに深い意味はなさそう。実はあまりおもしろいとは思わなかった。
6列の席を購入していたが、会場に到着して、最前列なのにびっくり。右端のほうなので、音のバランスがよくなかった。全体の音楽に私がさほど感銘を受けなかったのには、この席の影響があるのかもしれない。
もちろん、とてもよくできたオペラであり、一流の歌手たちが歌うので、素晴らしいのだが、新国立で見てきたこのオペラよりもずっと感動的かといわれると、むしろあまり差がないのではないかと思った。言い換えれば、私たちはボローニャ歌劇場とレベル的に大差ない舞台を日常的に新国立劇場で接しているということなのだろう。
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