エベーヌ弦楽四重奏団の大フーガに興奮した
2019年7月16日、サントリーホール ブルーローズでエベーヌ弦楽四重奏団のコンサートを聴いた。曲目は前半にベートーヴェンの弦楽四重奏曲第9番「ラズモフスキー第3番」と弦楽四重奏曲第13番。すさまじい演奏。興奮した。まだ興奮が残っている。
エベーヌ弦楽四重奏団を知ったのは2006年のラ・フォル・ジュルネだった。あまりの素晴らしさに圧倒された。ヴィオラ奏者が若い女性に代わってからは、今回、私は初めて聴いた。
完璧といえるようなアンサンブル。4台の楽器が同じ音色で、見事にこのカルテットの音を作り出す。精妙で鋭くて、まるで音楽全体が機敏に動き回る動物のような生命力を持っている。跳躍し、襲い掛かり、じゃれまわり、挑みかかる。まさに生命そのものの動き。第9番の終楽章など、時に奏者たちは椅子の上から飛び上がりそうになりながら、躍動して演奏する。本当に素晴らしい。エベーヌ弦楽四重奏団の独壇場というべき表現だと思う。
第13番はもっともっと素晴らしかった。楽章ごとの性格をくっきりと描く。が、少しもわざとらしくない。「カヴァティーナ」を叙情的に歌った後、「大フーガ」。期待していた通り、すさまじい大フーガだった。鋭くて激しい音が重なる。まさに人間の魂の奥から響き渡る生命の叫びのよう。生命力が爆発し、抑えても抑えてもまた沸き起こる。老年になってもまだ熱く燃える。そのような激しい生命力をたたきつけ、それを生のまま描こうとする。まさにベートーヴェンの魂そのもののような激しい音。しかも、それが研ぎ澄まされ、清澄で美しい。余計なものをはぎ取られてただ剥き出しの人間の魂だけになったかのような音だと思う。圧倒されて涙が出てきた。
この団体のベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲をぜひ聴いてみたいものだ。
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コメント
初めてコメントします。いつも、興味深く、コンサート評を読ませて頂いております。昨夜の、エベーヌQRの演奏は、まさに、梅雨空を吹き飛ばすような、生命の躍動するような快演でした!貴兄の文章も、いつもながら、生々しい感動を絶妙に伝えております!宣長が、晩年に300首余りの桜花を詠んだ歌の中の、「桜花ふかきいろともみえなくにちしおにそめるわがこころかな」を想い起しました。久しぶりに、心楽しく、幸せな気持ちで、家路につきました。
投稿: おとだま | 2019年7月17日 (水) 07時13分
おとだま様
コメント、ありがとうございます。
その方面の教養がないために、宣長を連想は致しませんでしたが、まったくおっしゃる通りの演奏でした。CDの録音を兼ねているとのことで、一層気合が入っているように見えました。CDの発売が待ち遠しいですね。
投稿: 樋口裕一 | 2019年7月24日 (水) 00時38分