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演奏会形式「イェヌーファ」 見事な歌手たち

 2019822日、東京文化会館小ホールで、演奏会形式による「イェヌーファ」を聴いた。ヤナーチェク好きの私としては聴き逃がせない。

 指揮は城谷正博。北村晶子によるピアノ伴奏、それに山崎千晶によるヴァイオリン、竹内美乃莉によるパーカッションが加わる。

 歌手はとてもよかった。やはり、イェヌーファの小林厚子が素晴らしい。凄みのある声で、音程もいいし、歌いまわしも見事。引き込まれた。コステルニチカの森山京子もこの役らしい威厳のある強い声が見事。ラツァの琉子健太郎、シュテヴァの所谷直生もそのほかのすべての歌手、合唱も実のレベルが高い。みんな声がしっかり出ている。チェコ語については私はまったくわからないが、私の耳にはチェコの人たちの発音と同じように聞こえる。

 ただ、実は私は、個々の音楽をとれば十分に満足できるはずなのに、全体的にはあまり感動できなかった。音楽が一本調子であるように感じた。

 歌手たちは見事な声で最初から最後まで歌いまくる。ずっとフォルテで歌っている感じ。どの歌手もその傾向がある。だが、そうなると、むしろメリハリがなくなる。緊張感もなくなる。まるで歌手たちの張り合いのようになる。前半はもっと抑えてよいのではないかと思う。ピアノの部分がもっとあってよいのではないか。とりわけ、第二幕の前半など、運命の時が近づくのを予感させるように、じわじわと緊張感を高めていくべきなのだと思う。ずっと同じように声を張り上げて歌うと、肝心のクライマックスが爆発しない。コステリニチカの罪の告白がほかの部分と大差のないものになってしまう。

 ピアノの伴奏にも同じような雰囲気を感じた。だから、音楽に立体感が生まれない。せっかくの素晴らしい歌手たち、演奏家たちなのに、もったいないと思った。

 とはいえ、久しぶりのヤナーチェクだった。私はヤナーチェク友の会にも所属していた。もちろん、手に入るすべてのオペラのCDDVDBDを所有し、何度も見聞きしている。ヤナーチェクのオペラは大好きだ。それなのに、このところ聴く機会がほとんどなかった。素晴らしいオペラだと思う。もっと上演してほしいものだ。

 なお、近況について少し報告しておく。

 817日から20日まで、北京旅行をしていた。25年ぶり、3度目の北京だった。王府井(ワンフージン)付近のホテルに泊まり、天安門広場、什刹海(シチャーハイ)、天壇公園、盧溝橋を見物した。25年前との違いに目を見張った。上海、広州などよりも成熟した大都市だった。奇抜な高層ビルはなく、けたたましい警笛もならず、市民は近代人のマナーを守る親切な人たちだった。逆に言えば、中国的な猥雑感は失われていた。ともあれ、現在の北京のありようを見ることができたのだった。

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