エッティンガー+東フィルの「悲愴」 猛暑の中の「悲愴」は格別
2019年8月11日、ミューザ川崎でフェスタサマーミューザ、東京フィルハーモニー交響楽団のコンサートに出かけた。20日ぶりくらいのコンサート。このところ、とても忙しくて、コンサートに行く時間も、家でオペラ映像や映画をみる時間もなかった。お盆の時期になってやっと少し余裕ができた。
指揮はダン・エッティンガー。曲目は前半にワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」から第一幕の前奏曲と、高木綾子が加わってモーツァルトのフルート協奏曲第1番。後半にチャイコフスキーの「悲愴」。
「マイスタージンガー」前奏曲は音にまとまりがないのを感じた。席のせいかもしれない。が、モーツァルトになってだんだん耳が慣れてきた。高木さんのフルートは切れが良くて音が美しい。エッティンガーの指揮もツボを心得ている。高木さんの演奏もエッティンガーの指揮も、もっと深みのある音楽を創ろうとしているようだ。私としては、もっとさわやかに鳴らすだけのほうがずっと魅力的なのに・・・と思わないでもなかった。ソリストのアンコールとして、ドビュッシーの「シランクス」。とても美しい音色だった。高木さんのフルートはモーツァルトよりもフランス音楽に向いているのでは?と勝手なことを思った。ふくよかで柔らかみのある音。
後半の「悲愴」はとても良い演奏だった。エッティンガーは、情緒に流されるのでなく、ドラマティックな音の塊としてこの曲を演奏しているようだ。ドイツ音楽的なアプローチといえるだろう。第一楽章も「慟哭」といえるような音楽にはならない。エッティンガーは音楽に勢いをつけ、構成のしっかりした音楽に仕上げていく。もしかしたらチャイコフスキー・ファンには物足りない演奏かもしれないが、情緒たっぷりのチャイコフスキーが少々苦手な私としては、これは好ましい。ただ、エッティンガーの要求に東フィルは十分についていっていない面もあるのではないかと思った。管楽器を中心にとても良い音を出していたが、全体の爆発力が不足しているような気がした。エッティンガーはもっと爆発的なエネルギーを出したかったのではないか。
猛烈な暑さの中、川崎まで出かけたが、こんな時の「悲愴」も、それはそれで格別だと思った。暑さを吹き飛ばす気がした。
| 固定リンク
「音楽」カテゴリの記事
- ルイージ&メルニコフ&N響 良い演奏だが、私の好みではなかった(2022.05.21)
- METライブビューイング「ドン・カルロス」 フランス語版の凄味を感じた(2022.05.17)
- バーエワ&ヤノフスキ&N響 苦手な曲に感動!(2022.05.14)
- Youtube出演のこと、そしてオペラ映像「パルジファル」「シベリア」(2022.05.10)
- ヤノフスキ&N響 「運命」 感動で身体が震えた(2022.05.08)
コメント