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ヤルヴィ+N響 演奏会形式「フィデリオ」 圧倒的な歌手陣

 2019830日、オーチャードホールで、NHK交響楽団の演奏による演奏会形式の「フィデリオ」を聴いた。指揮はパーヴォ・ヤルヴィ。

 全体的にはとても良い演奏だったが、はじめのうちは歌手とオーケストラの音のずれを時々感じた。オーケストラもぴしゃりと決まらないこともがあったと思う。完成度という面では少し不足したと思う。もう少しリハーサルをしてほしかった。とはいえ、第一幕後半からだんだんと精度が増してきた。第二幕冒頭に「レオノーレ」第3番が演奏されたが、それは素晴らしい演奏。このあたりから精度が増したように思う。ドン・ピツァロがフロレスタンを殺そうとし、レオノーレが正体を明かすあたりからは大きくドラマが展開して見事。最後は素晴らしかった。

 歌手陣は世界トップレベルの陣容。私もザルツブルクなどで何度か聴いた人たち。その中でもとりわけレオノーレ役のアドリアンヌ・ピエチョンカが伸びのある強い声で素晴らしかった。マルツェリーネのモイツァ・エルトマンも可憐な姿と清潔な歌で見事。ロッコのフランツ=ヨーゼフ・ゼーリッヒはこの役にふさわしい豊かな深い声。ドン・ピツァロのヴォルフガング・コッホもまたこの役にふさわしい張りのある強い声。そして、第二幕から登場するフロレスタンのミヒャエル・シャーデはしなやかで品位ある声。

 ジャキーノの鈴木准、ドン・フェルナンドの大西宇宙も健闘。そして、冨平恭平合唱指揮による新国立劇場合唱団も素晴らしい。

 パーヴォ・ヤルヴィの指揮も躍動感にあふれ、時にきわめて繊細に音楽を重ねる。ヤルヴィはあまり大袈裟にドラマを盛り上げようとはせず、むしろ内面に寄り添って丁寧に苦しみと喜びを描こうとしているように感じた。その点に大きな説得力を感じた。

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音楽」カテゴリの記事

コメント

私は9月1日に聞きました。見事な演奏に圧倒されました。
このオペラは演奏会形式の方がいいです。途中で長々ドイツ語のセリフが入るより、全体に引き締まるし、その分集中できます。
これまで男装の女性がよく見破られないものだとか、フェルナンドが来ただけでピッツァロはすぐに諦めちゃうの?と、劇のリアリティに欠ける部分が不満だったのですが、演奏会でオラトリオかカンタータを聞いている気分で聞けば、やはりベートーヴェン様の音楽です。実に感動的です。2幕1場の幕切れの夫婦の2重唱や、フェルナンドの美しい人間性などがくっきり表現されるところなど、この曲で初めて感動を味わいました。歌手はみんな驚くほどの高水準でしたね。

投稿: | 2019年9月 2日 (月) 17時29分

小生も、昨日、第2回のマチネー公演を聴いて参りました。ヤルヴィ指揮のNHK交響楽団は、透明で、清澄な音色で、全体に、直截で端正な演奏だったと思いました。歌手陣も、ピエチョンカのレオノーレ始め、いづれも素晴らしい出来栄えでした。新国立劇場合唱団も、整然と劇をバックアップしておりました。今回のオケは、アンサンブルは、最初から、よく揃っていたと思いました。ヤルヴィは、弦楽器を、極力、ヴィブラートを排して、純粋な響きによる、内面的なドラマに仕上げていたように感じました。フィデリオは、ミサ・ソレムニスと同様、難曲で、上演する機会が少ないのですが、先生は、過去の公演や、音源で、お勧めのものは、ございますか?小生は、マゼール・ウィーンフィルの新鮮でドラマチックな音源を愛聴しております。

投稿: おとだま | 2019年9月 2日 (月) 17時31分

おとだま様 および9月2日にコメントくださった方

コメント、ありがとうございます。9月1日の演奏は、初日よりももっと素晴らしかったのでしょう。初日の第二幕以降のように初めから演奏されていたら、それこそ最高の演奏だったと思いますが、それが2日目に実現されたのだと思います。
それにしても素晴らしい歌手たちでした。パーヴォ・ヤルヴィの充実ぶりには目を見張るものがあります。『フィデリオ』については、確かに演奏会形式のほうが楽しめます。音楽のすばらしさを再確認できると思います。

投稿: 樋口裕一 | 2019年9月 5日 (木) 10時28分

「フィデリオ」は古いけど未だにフルトヴェングラー盤が最高と思いますね。
ライブもスタジオ録音も最高。
2幕の後半夫婦の再会からは涙無くして聴けない。
フロレスタン限定だとヨナス・カウフマンが凄い。
登場のアリアの「Gott!」の叫びをピアニシモからフォルテまでクレッシェンドで一息に歌う事でフロレスタンの絶望を表現してて感動。
それを可能にするカウフマンの歌唱テクニックも素晴らしい!

https://www.youtube.com/watch?v=Mcl6lZ_uMmY

投稿: | 2019年9月25日 (水) 15時12分

コメントをくださった方へ
私が生まれて初めてオペラの全曲レコードを購入したのが、フルトヴェングラーのスタジオ録音盤でした。エーデルマンの悪漢ぶりに圧倒されたのが、オペラ好きになったきっかけです。そして、おっしゃる通り、フロレスタン役の最高はカウフマンです。レオノーレ役では、映像では、ベームのDVDのジョーンズ(可憐で美しい!)ですね。

投稿: 樋口裕一 | 2019年10月 3日 (木) 08時58分

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