オペラ映像「清教徒」「ジョヴァンナ・ダルコ」「二人のフォスカリ」「沈鐘」
締め切りの迫った原稿はなく、秋の授業のたぐいもまだ始まっていない(数日後に始まる!)ので、時間的、精神的に少し余裕がある。オペラ映像を何本かみた。簡単な感想を記す。
ベッリーニ 「清教徒」2018年 シュトゥットガルト州立歌劇場
歌手陣はとてもいい。とりわけヒロインのエルヴィーラを歌うアナ・ドゥルロフスキは澄んだ音程に良い声でテクニックも見事。堪能できる。アルトゥーロのルネ・バルベーラもしっかりした強い声でとてもよい。外見的にはちょっと不満。リッカルドのガジム・ミシュケタも悪役ぶりがとてもいい。
ただ気になるのは、マンリオ・ベンツィの指揮だ。第二幕からはだいぶ改善されるが、第一幕では、かなり騒々しくて慌ただしくてがさつ。歌手のことを考えずに自分勝手に突き進んでゆき、しかもオケをコントロールしきれていないように聞こえる。
ヨッシ・ヴィーラーとセルジョ・モラビトによる演出は、さすがドイツの歌劇場というべきか、あれこれと読み替えがなされている。アルトゥーロが盲目になっていたり、エルヴィーラが狭い屋敷に閉じ込められていたり。私はベッリーニに詳しいわけではなく、そもそもこのオペラも実演でみたことはなく、映像を1、2本みたことがある程度なので、偉そうなことは言えない。この演出意図もよくわからない。が、いずれにせよ、あまり面白いと思わなかったし、演出について深く考えたい気持ちにもならなかった。
ヴェルディ 「二人のフォスカリ」2016年 ミラノ、スカラ座
ヴェルディ初期のこのオペラを初めてみた。ベッリーニの後に聴くと、やはりオーケストレーションがよくできているし、歯切れがいいし、ドラマが整理されている。ハッとするような美しいメロディもたくさん出てくる。ただ、やはり中期以降のオペラに比べると、おもしろみに欠けるのは間違いない。
フランチェスコ・フォスカリを歌うプラシド・ドミンゴがさすが。バリトンの役だが、まったく違和感がない。もちろんかつての輝きはないが、声は出ているし音程はいいし、風格はあるし。ドミンゴが出てくると、音楽がきりりとしまる。第三幕など圧巻。ヤコポ・フォスカリを歌うフランチェスコ・メーリも声が美しくて、とてもいい。ただ信じられないのは、ルクレツィアを歌うアンナ・ピロッツィ。あとになるといくらかよくなるが、それでもほかの歌手に比べるとかなり力量が落ちると思う。声は出ていないし、音程は不安定だし、演技もよくないし、外見的にもこの役に見えない。なぜこの人が使われているのだろう。
ミケーレ・マリオッティの指揮はきびきびしていてメリハリがあって、とてもいい。アルヴィス・ヘルマニスの演出も踊りやジェスチャーがたくさん入るが、基本的にはオーソドックスで的確にまとまっている。暖色系に統一されていてとても風格がある。
ヴェルディ 「ジョヴァンナ・ダルコ」2016年 パルマ、ピロッタ宮殿ファルネーゼ劇場
ヴェルディ初期のこのオペラを初めてみた。後のヴェルディのオペラに比べると、やはり面白みに欠ける。演出的にも、小さな丸い舞台を使っていて、あまり演劇的な動きがないために、まるでオラトリオのよう。
ジョヴァンナを歌うのは韓国系のソプラノ、ヴィットリア・イェオ。澄んだ声で、しかもスケールの大きな歌唱。素晴らしい歌手だ。カルロ7世を歌うルチアーノ・ガンチもとてもいい。ちょっと音程の怪しいところを感じたが、よく声が伸びている。
ラモン・テバールの指揮するオーケストラは悪くはないと思うが、私としてはとりわけ惹かれることはなかった。
レスピーギ 「沈鐘」 2016年 カリアリ歌劇場
ハウプトマンの原作によるレスピーギ作曲のオペラ。初めてみたが、とてもおもしろい。ほかの作曲家のオペラで言えば、ストーリー的には「ルサルカ」や「ペレアスとメリザンド」を思い出す。音楽的にも「ペレアス」をイタリア語にした雰囲気とでもいうか。私はレスピーギの音楽を感動して聴いたことがなかったが、いい作曲家ではないか!と思った。
ピエル=フランチェスコ・マエストリーニの演出もとてもおもしろい。背景に湖底が映像で示されるなど、わかりやすいし、美しい。ドナート・レンツェッティの指揮も明確でいい雰囲気。
多くの歌手がとてもいい。ラウテンデラインを歌うヴァレンティーナ・ファルカスが澄んだ声で容姿もこの役にふさわしくかわいらしい。マグダ役のマリア・ルイージア・ボルシも必死感があっていい。魔法使いの老婆のアゴスティーナ・スミンメーロも貫禄がある。
ただ肝心のエンリーコを歌うアンジェロ・ヴィッラーリが音程が狂いっぱなしで苦しげに、しかし大声で歌いまくる。ほとんど聴くに堪えない。なんとかならないものか。私には最悪の歌手に思えるのだが!
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