エーベルレと大野+都響を楽しんだ
2019年9月4日、サントリーホールで東京都交響楽団の定期演奏会を聴いた。指揮は大野和士。曲目は前半にヴェロニカ・エーベルレが加わってベルクのヴァイオリン協奏曲、後半はブルックナーの交響曲第9番。
ベルクの協奏曲については、とても良い演奏。エーベルレは若い女性だが、音程がよく、切れが良い。第2楽章はまさに悲痛な音楽。それを無理やりでなく、大袈裟にがなり立てるわけでもなく、直接的に描く。オーケストラもベルク特有のロマンティックな要素と鋭利な要素を合わせ待つかのような演奏。
ヴァイオリンのアンコールはプロコフィエフの無伴奏ヴァイオリンソナタの第2楽章。のびやかで切れが良い。とても気持ちの良い演奏。せせこましくなく、のびのびしていてとてもいい。
後半のブルックナーもとても良い演奏だったと思う。都響サウンドと呼ぶべき澄んだ音。滞ることなく流れ、スケール大きく音楽が広まっていく。構成にも説得力がある。ところどころ大いに魂が震えた。
とはいえ、私の好きな演奏だったかというと、そうではない。私が昔から親しんできたブルックナー演奏ではない。少しマーラー的といえるのではないか。メロディの線を重視して、音楽がずっとメロディアスに連続的に鳴らそうとする演奏だと思う。が、私の好きなのは、そして私が「ブルックナー!」と思っているのは、メロディの流れよりも構築性や和声を重視した音楽だ。だから、私の耳には、大野の演奏はなよなよしているように聞こえる。しかも低弦が弱く、どっしりした感じがない。
今では、昔懐かしいブルックナー演奏をする指揮者は少なくなった。しなやかでメロディアスで色彩的なブルックナーが増えた。それはそれで、もちろん悪いことではないのだが、昔ながらのどっしりとして後世的なブルックナーが懐かしい。
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