« 藤原歌劇団「ランスへの旅」 最初から最後までワクワク | トップページ | ロイヤルオペラ「ファウスト」 グリゴーロ、ダルカンジェロ、デグーが素晴らしかった »

オペラ映像「サロメ」「セヴィリアの理髪師」「アルジェのイタリア女」「オリ―伯爵」

 大きな台風だった。2メートルほどの高さの庭木が6本倒れた。予想外の出費だった。ともあれ、いくつかオペラ映像をみたので、簡単な感想を書く。

 

リヒャルト・シュトラウス「サロメ」2018年 ザルツブルク、フェルゼンライトシューレ

 演奏については素晴らしいと思った。

 何よりアスミク・グリゴリアンのサロメに驚嘆。歌も輝きがあり、強さがあり、しかもスケールが大きい。容姿的にも、十分に可憐な少女に見える。ものすごいサロメ歌手が出てきたものだ。ヨカナーンのガボール・ブレッツも強さと威厳がある。ヘロデ王のジョン・ダスザック、ヘロディアスのアンナ・マリア・キウーリも見事。ナラボートがやけにいい歌手だと思って配薬表を見たら、ユリアン・プレガルディエンだった。それに、小姓役のエイヴリー・アムローもとても魅力的。

 そして何よりもフランツ・ヴェルザー=メストの指揮が素晴らしい。初めのうちは、少し勢いのない、緻密なだけの演奏だと思っていたが、そうではなかった。色気のようなものは欠けている気がするが、狂気じみた情念が渦巻いている。精密に組み立てられ、鋭利に切り込んでいく。そして、もちろんウィーンフィルの音の精妙さは言葉をなくすほど。

 ただ、ロメオ・カステルッチの演出については、私はよく理解できなかった。全員が現代の服。王と王の家来たちはスーツ姿で、マスクのように顔の部分をペンキのようなもので赤く塗っている。サロメは踊らずに、縛られた形で石に圧縮される。ヨカナーンは、最後むしろ生首の切り取られた状態で座らされているし、代わりに切り取られた馬の頭部がある。何のことやら!

 

ロッシーニ 「セヴィリャの理髪師」2018年 アレーナ・ディ・ヴェローナ

 野外劇場のライブなので、オーケストラが少し粗い。アルマヴィーヴァ伯爵役のドミトリー・コルチャックもはじめは声が出ない。フィガロ役のレオ・ヌッチもさすがに声の輝きは失われ、舞台姿は老人にしか見えない。が、ヌッチが「私は町の何でも屋」を歌い、大拍手にこたえて再びこれを歌うころから、もうそんなことはどうでもよくなる。最高に楽しい! 演奏もどんどん良くなる。バルトロのカルロ・レポーレ、バジリオのフェルッチョ・フルラネット(ヌッチと並んでこの人もすごい!)も最高。ロジーナのニーノ・マチャイゼも見事な声とおきゃんな演技を見せてくれる。ベルタのマヌエラ・クステルも愛嬌のあるアリアを聴かせてくれる。

 指揮はダニエル・オーレン。ユダヤ帽をかぶって指揮する。初めは粗いと思ったが、ダイナミックでよかった。演出はウーゴ・デ・アナ。ローラン・ペリのタイプの演出。新しい解釈を示すというより、踊りがあり、軽妙な動きがあって楽しい。オペラが終わると同時に花火があがる。それも圧巻。

 

ロッシーニ 「アルジェのイタリア女」2018年 ザルツブルク、モーツァルト劇場

 確か、NHKBSで放送された映像。全体的にレベルの高いとても楽しい上演だと思う。だが、やはり何といっても、これはチェチーリア・バルトリが素晴らしい。もしかしたら全盛期よりも衰えているのかもしれないが、それにしても圧倒的。声の威力、声のテクニック、躍動感。すべてがものすごい。ムスタファのルダール・アブドラザコフ、リンドーロのエドガルド・ロチャも言うことなし。ジャン=クリストフ・スピノジの指揮もとても躍動感がある。

 ただモーシュ・ライザーとパトリス・コーリエの演出については、とても愉快で楽しいのだが、エルヴィラのが色仕掛けで夫を惑わそうとするところなど、ちょっとえげつない気がした。とはいえ、最高に楽しい。

 

「オリー伯爵」2017年 パリ、オペラ=コミック座

 とても愉快な舞台だ。歌手陣はそろっている。オリー伯爵のフィリップ・タルボ、フォルムティエ伯爵夫人のジュリー・フックス、イゾリエのガエル・アルケス、ラゴンドのイヴ=モー・ユボー、教育係のパトリック・ボレール、みんなが超一流。とりわけ私は伯爵夫人のフックスに痺れた。場内に響く華麗な美声。声のテクニックも見事。容姿も伯爵夫人にふさわしい。美しくて気品がある。

 ルイ・ラングレの指揮も、私にわかる限りでは何の不満もない。躍動し、わくわくする演奏。ドゥニ・ポダリデスの演出もわかりやすい。観客の笑いも漏れる。

 ロッシーニの舞台は本当に楽しい!

|

« 藤原歌劇団「ランスへの旅」 最初から最後までワクワク | トップページ | ロイヤルオペラ「ファウスト」 グリゴーロ、ダルカンジェロ、デグーが素晴らしかった »

音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 藤原歌劇団「ランスへの旅」 最初から最後までワクワク | トップページ | ロイヤルオペラ「ファウスト」 グリゴーロ、ダルカンジェロ、デグーが素晴らしかった »