日本の名手たちによる「フィレンツェの思い出」 素晴らしかった
2019年9月24日、ヤマハホールで「伊藤亮太郎と名手たちによる弦楽アンサンブルの夕べ Vol.2」を聴いた。
演奏は、ふだんは別々のオーケストラで活動する日本を代表する弦楽器の名手たち(伊藤亮太郎・横溝耕一・柳瀬省太・大島亮・横坂源・辻本玲)。曲目は、シューベルトの弦楽三重奏曲 第1番(伊藤・柳瀬・横坂)とブラームスの弦楽五重奏曲第1番(伊藤・横溝・柳瀬・大島・辻本)、そして、チャイコフスキーの弦楽六重奏曲「フィレンツェの思い出」。
シューベルトの曲は第1楽章だけが完成され、未完に終わった作品だという。初めて聴いたが、とてもシューベルトらしい曲。親しみやすく魅力的で生き生きとしたメロディ。ただ、繰り返しが多くてとりとめがない。実をいうと、私はシューベルトのこの種の曲はかなり苦手。
2曲目のブラームスが始まってほっとした。シューベルトの直後にブラームスを聴くと、もちろん三重奏曲と五重奏曲の違いはあるが、その重心の低さに改めて驚く。名手たちだけあって、とても良い演奏。音色がぴたりと合い、見事に溶け合っている。
ただ、実をいうと、ブラームスに関しては、演奏者たちがどんなブラームス像を伝えようとしているのかよくわからなかった。第2楽章の表情についても、憂いにあふれた音楽にしたいのかそうでないのかはっきりしなかった。よくつかめないまま終わった。
最後の「フィレンツェの思い出」は素晴らしかった。これも完璧に音が溶け合い、リズムがぴたりと合い、しかも生き生きとしたチャイコフスキーが浮かび上がってきた。あまり感傷的でもロシア的でもないチャイコフスキー。余分な思い入れは入れずにドイツ音楽のようなアプローチで演奏される。フーガ的な部分が先鋭的、重層的で見事に構築されていく。そうでありながら、もちろんとてもロマンティックで陰りがある。とても現代的なチャイコフスキーが浮かび上がってきた。
アンコールにリヒャルト・シュトラウスの「カプリッチョ」からの弦楽六重奏曲。これも素晴らしかった。シュトラウスのこの曲は大好きな曲だが、室内楽曲として聴いたのは初めてだった。後期のシュトラウスの市全体の打つ草をとてもよく表した曲だと思う。素子れ、それを少しも力まずに自然体に演奏。素晴らしい。
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