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ツィメルマンのブラームス、ピアノ四重奏曲 素晴らしい演奏だったが、室内楽の醍醐味は感じられなかった

 20191017日、サントリーホールで「クリスチャン・ツィメルマン ブラームスを弾く」を聴いた。

 演奏は、ツィメルマンのほかに、ヴァイオリンのマリシャ・ノヴァク、ヴィオラのカタジナ・ブゥドニク、チェロの岡本侑也ら若手奏者が加わって、曲目は、前半にブラームスのピアノ四重奏曲第3番、後半に第2番。

 会場に入って、いつもと雰囲気が違うことに気づいた。品のいい奥様方がたくさんおられる。ピアノの貴公子ツィンマーマンのファンの女性が大勢いるということのようだ。

 曲が始まって、その鮮烈な音に驚いた。ヴァイオリンとヴィオラは女性なのに、かなり強いアタックで、音程がよく、切れの良い音。ピアノの音も素晴らしい。ものすごい演奏だと思った。躍動感があり、繊細で、しかもブラームス特有の陰りもある。

 が、実をいうと、第1楽章、第2楽章と進んでいくうちに、少々退屈になってきた。いや確かに素晴らしい。が、室内楽の醍醐味を感じない。しばらくして気づいた。

 室内楽というのは、やはりそれぞれの楽器の奏者が自分の個性を発揮して音楽を作り、ほかの演奏者と交流しあい、時に妥協し、時に主張して作っていってこそおもしろい。つまりは、奏者たちのつばぜり合いが行われてこそ、おもしろい。ところが、今回の演奏は、大巨匠ツィメルマンと、ほかは若手奏者たち。大先生と優秀な生徒たちという構図だ。ツィメルマンが指揮をして、真面目な秀才たちがそれに従っている風になる。だから、奏者のつばぜり合いにならない。個性のぶつかり合いにならない。

 繰り返すが、素晴らしい演奏であることに違いない。アンサンブルは完璧だし、それぞれの奏者はテクニックも見事。そして、それぞれの音が実に美しい。そして、いうまでもなくツィメルマンのピアノは絶品。ただ、上に書いたことのみ不満。ないものねだりだとはわかっているが、私としては、改めて、私自身の好きな室内楽というのは、奏者たちの個性のぶつかり合いだということに気づいたのだった。

 ところで、今回はどういうわけか「会場内での写真撮影禁止、録音禁止」が普段よりも強く呼びかけられ、開演前にホール内でスマホを開くだけで係の人の注意を受けていた。もちろん、撮影禁止、録音禁止はよくわかるが、開演前にスマホを開くのを禁止する必要がなぜあるのだろう。少々行き過ぎではないかと思った。それとも何か事情があったのだろうか。

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コメント

小生も、聴いて来ました。ツィメルマンは、最近のピアニストでは、最も注目する大家ではあり、これまでも、ベートーヴェン、

投稿: | 2019年10月18日 (金) 01時42分

小生も、聴いて来ました。確かに、ツィメルマンのピアノは、音色も綺麗だし、精緻なピアニズムで、アラビアの絨毯のような、一分の隙もない装飾的な印象を受けます。ご指摘のように、室内楽においても、緊密なアンサンブルを要求するあまり、各パートが掛け合うような自由度が乏しく、勢い、窮屈な表現になるものと思われます。前半の、3番の四重奏は、薄明のような印象で、スッキリしなかったが、後半の2番は、馴染みがある曲のせいか、起伏があり、素晴らしかった。特に、第2楽章は、叙情の極みで、夢心地であった。ツィメルマンは、ライヴ演奏を信条として、表現の固定化を嫌い、録音も極力しない主義の演奏家です。以前に、ライヴを隠し録りされ、you tubeにアップされて、CD制作会社?と法廷沙汰になり、異常に神経質になっているらしいです。

投稿: おとだま | 2019年10月18日 (金) 02時28分

小生も、聴きました。ツィメルマンは、来日するたびに聴いていますが、最近は、2月のソロ・リサイタルの、ブラームスの3番のソナタに続き、今回は、オール・ピアノ四重奏のプログラムでした。前半の3番は、薄明の中のような、もやのかかった印象でしたが、後半の2番は、一転、陽のさしたような、起伏に富む、情感に満ちた素晴らしい演奏でした。第2楽章のポーコ・アダージョは、絶品で、夢見心地でした。ツィメルマンのピアニズムは、音色が美しく、精緻極まるもので、ペルシャ絨毯のような、幻惑的なアラベスク模様を連想させる装飾的な印象を与えます。ディナミークよりも、アゴーギクを主体にした表現で、曲の核心に迫ります。ご指摘のように、今回の室内楽においても、その姿勢が貫かれ、各奏者の即興的な掛け合いや対話といったものが見られず、窮屈な印象となっているものと思われます。ツィメルマンは、一度限りのライヴ演奏を信条とするタイプの演奏家で、固定化された記録を嫌い、録音は極力行いません。ライヴで見事だったベートーヴェンの後期のソナタなども、未だ録音されていません。以前、聴衆による隠し取りで、YouTubeに上げられて、レコード会社と訴訟沙汰になり、それ以降、極端に神経質になっているようです。

投稿: おとだま | 2019年10月18日 (金) 07時58分

おとだま 様
コメント、ありがとうございます。
スマホ規制につきまして、なるほど、そういうことだったんですね。納得できました。
確かにおっしゃる通り、素晴らしい演奏でした。ただ、私はピアノに対する感受性が少し鈍いので、十分に味わえなかったかもしれません。今度はソロを聴いてみたいものです。

投稿: 樋口裕一 | 2019年10月23日 (水) 21時16分

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