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波多野睦美+大萩康司 「スカボロー・フェア~歌とギターでおくる映画音楽」 澄んだ歌声

 20191023日、和光大学ポプリホール鶴川で「スカボロー・フェア~歌とギターでおくる映画音楽」を聴いた。

 メゾ・ソプラノの波多野睦美の名前はかなり前から知っていた。ヘンデルのオペラなどを何度か聴いて、素晴らしい歌手だと思っていた。ところがふとしたことで、この方が私の卒業した大分上野丘高校の後輩だと知った。坊主頭を強制され、ブラック校則でがんじがらめにされ受験競争を強制される大嫌いな高校だったが、後輩に対しては思い入れがある。聴く機会はないかと探していたら、このコンサートを見つけた。伴奏は大萩康司のギター。

 私は基本的に映画音楽は聴かないが、前半の「ムーン・リバー」や「スカボロー・フェア」「サマータイム」「マルセリーノの歌」など、私にはとても懐かしい曲のオンパレードだった。私が好きだったのはイタリア、フランスの映画だったが、もちろん私は演劇科映画専攻なので、映画はたくさんみている。ここで取り上げられた映画はすべてみた覚えがある。

 なんと美しい声。ヴィブラートの少ない澄んだ声で、音程がとてもいい。弱音が美しく、音を長くのばしても音程の揺れがなく、静かに消えていく。そのため、言葉がじかに聞き取れる。私はワーグナー、シュトラウス好きなので、この種の声をあまり聴かないのだが、私の知る限りでは、エマ・カークビーの声と歌唱に似ている。日本人の歌でこれほど澄んだ声を聴いた覚えがないほど。

 ギターもとても繊細で抒情的。それが古い時代の音楽にぴったりとマッチしている。ソロで「愛のロマンス」(要するに「禁じられた遊び」)が演奏されたが、ゆっくりと繊細に演奏され、独特の雰囲気が描き出される。

 後半はシェークスピアにかかわる音楽や同時代のダウランドの曲を中心に組み立てられたプログラムだった。英語によるシェークスピアの朗読を交えての音楽。波多野さんの歌が言葉の延長線上、詩の延長線上にあること、そして波多野さんがどれほど言葉を大切にしているかがよくわかる。さすがに、英語の発音も日本語の発音もとても美しい。アンコールの最後は「カルメン」の「ハバネラ」だったが、フランス語もとてもきれいな発音。

 ただちょっと、「サマータイム」とアンコールの「ハバネラ」が美しすぎるし、さわやかすぎる。もちろん、意識したうえでさわやかに歌っているのだと思うが、もう少しアク強く歌ってくれるほうが私の趣味ではある。そして、これらの曲よりも、もっとダウランドやパーセルの歌を歌ってほしいと思った。

 高校の先輩として言うのではない。間違いなく、素晴らしい演奏だった。日本にもエマ・カークビーのような歌手がいたんだ!と思った。

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