小泉+都響のブルックナー第7番 とても人間的なブルックナー!
2019年10月16日、サントリーホールで東京都交響楽団の定期演奏会を聴いた。指揮は小泉和弘、曲目は前半にワーグナーの「ジークフリート牧歌」と後半にブルックナーの交響曲第7番。今日、10月16日はマエストロの70回目の誕生日だという。古希を迎えるこの日にこの2曲を選んで、満を持しての演奏。とても素晴らしかった。
「ジークフリート牧歌」は楽器の透明な絡みに重点を置いた演奏だと思う。精妙に、そして緻密に組み立て、しなやかに音を鳴らす。細部にまで神経が行き届いている。
小泉の指揮は手を振るだけの単調な動きなのだが、手のちょっとした動きが音に反映する。身体を横に向けると、それにしたがって、音色が変わる。それによって音楽が見事に構築されていく。魔法を見ているかのよう。
ブルックナーの第7番は、それ以上に組み立てのしっかりした演奏だった。第1楽章は理性的な組み立てが表に出すぎていて、力感が不足すると思った。が、おそらくそれもマエストロの解釈だったのだろう。第2楽章でロマンティックに盛り上げて、あわてず騒がず、じっくりと宇宙的世界に入っていく。第3楽章のスケルツォで力感が増し、ダイナミックになっていく。そして、第4楽章。音が徐々に重なり合い、縦横に行きかってクライマックスに進んでいく。その理性的な展開はまさに小気味いいほど。完璧に音をコントロールしている。都響は、もちろんちょっとしたミスはあるが、全体的には素晴らしい音を出してブルックナーの世界を構築していく。フィナーレはことのほか素晴らしかった。涙が出てきた。
徹底的に理性的なブルックナー。おどろおどろしさもあまりないし、宗教的な雰囲気もあまりない。この上なく人間的で予定調和的なブルックナー。もちろん、もっと人知を超えたような激しい音がほしいと思わないでもない。もっともっと狂気にいたるような、あるいは天へと至るような激しさがあってもいいとも思う。が、小泉のブルックナーはそれを目指さない。そして、それはそれで完成されたすばらしいブルックナーだと思う。ちょっとスケールの小さいブルックナーだが、これもブルックナーだ。もしかしたら、これこそがブルックナーかもしれない。実は、私はいたずらに咆哮するブルックナーよりも、このような知的なブルックナーのほうが好きだ。
終演後、オーケストラによって「ハッピー・バースデー」が演奏され、マエストロに花束が渡された。私も心の中で、「誕生日おめでとう」と叫んだ。
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