ブロムシュテット+N響のブラームス3 ブロムシュテットも枯れた?
2019年11月17日、NHKホールで定期演奏会を聴いた。指揮はヘルベルト・ブロムシュテット、曲目は前半にマルティン・ステュルフェルトのピアノが加わって、ステンハンマルのピアノ協奏曲第2番、後半はブラームスの交響曲第3番。
ステュルフェルトという作曲家は初めて知った。ストックホルム生まれのシュトラウスより少しあとの世代の作曲家らしいが、曲想はブラームスとショパンを合わせたような感じ。とても魅力的なところもたくさんあったが、結局、よくわからなかった。私くらいの歳になると、初めての曲を予備知識なしに聴くのはつらい。曲の構成を捉えられないまま終わってしまう。
ピアノのアンコールは、ブラームスの幻想曲集作品116からの曲だという。抒情性を秘めた粒立ちの良いピアノだった。
ブラームスのほうはかなり独特の演奏だと思った。良くも悪くも、ついにブロムシュテットも枯れてきたと思った。今までのブロムシュテットのような若々しい推進力がない。一気呵成に音楽を作るというより、穏やかな箇所があり、静まりかえる個所があり、大きく躍動する箇所がある。しみじみとした音楽がしばしば聞こえてくる。一つの川のように、様々な表情を見せて、音楽が流れていく。様々な水の表情があるように、音楽にも様々なニュアンスがある。それをブロムシュテットは丁寧に音楽にしていく。そのため、構成感が弱まる。が、あっというほど美しいところがいくつもある。ところどころで魂が震えた。
第2・3楽章ではとりわけ、まるで一つ一つの音を慈しんでいるような箇所がいくつもあった。すっと静かになり、管楽器の音、弦楽器の音がまるでこれが最後の別れであるかのように穏やかに鳴りわたる。
第4楽章では大きく盛り上がった。しかし、ここでもしばしば推進力がある音楽ではなく、しばしば歩みを止め、一つ一つの音を慈しむ場面がある。こうして、最後、静かに終わる。
素晴らしい演奏だと思う。ただ、私は、最終楽章はもう少し盛り上げてよかったのではないかと思った。ちょっと、細かいニュアンスを描きすぎて、少し爆発が物足りなく思った。きっと、ブロムシュテットは爆発させるよりも、様々な部分のそれぞれの美しさを保ちながら、最後に静かに終わっていく様子を描きたかったのだろう。
ブロムシュテットもついに枯れたのだろうか。もちろん、まだまだ元気だ。90歳を超えているとは思えない足取りと棒さばき。しかし、人生の残りをかみしめるような音楽の表情をブロムシュテットの音楽のなかに、今回、初めて聴いた気がする。
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