新居由佳梨のフランクに感動!
2019年11月13日、オペラシティ リサイタルホールで「新居由佳梨ピアノリサイタル 重なり合う旋律 〜バッハとフランクに寄せて〜」を聴いた。ゲスト共演はチェロの西谷牧人。素晴らしかった。
曲目は前半にバッハのカンタータ第147番より「主よ、人の望みの喜びよ」、イタリアン協奏曲 BWV971、フランクの「プレリュード、コラールとフーガ」ロ短調、後半にバッハのヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ第1番とフランクのヴァイオリン・ソナタ イ長調(チェロ編曲版)。
フランス的なバッハといってよいだろう。優雅でしっとりとして色彩感のあるバッハ。音の重なりを重視するが、ドイツ的な剛腕でうねるような音の重なりではない。しなやかでさわやか。これが新居のバッハなのだろう。フランス音楽を得意とする新居らしい。
が、私はバッハよりもフランクに強く惹かれた。まず、プレリュード、コラールとフーガ ロ短調に驚嘆した。これは単にフランス的というよりも、もっとずっと強い表現だ。激しい感情の起伏を描く。しかし、決してロマンティックではなく、やはりバッハ風。感情移入するのではなく、客観性を保って知的でダイナミック。そうか、フランクの音楽というのはこんな音楽だったんだ!と納得。何度か魂が震えた。
後半のヴァイオリン・ソナタ(チェロ版)もよかった。第2楽章のピアノの出だしに驚いた。フランク的なうねりという言葉を使いたくなるような大きな音の躍動だった。その後、大きく盛り上がっていった。しかし、チェロの西谷の個性もあるのかもしれないが、ロマンティックに思い入れたっぷりにしゃかりきになって演奏するのでなく、客観性を保っている。新居のピアノも、大きく流動しながらも、けっして熱くならない。そう、まさにバッハ的。しかし、音楽は緻密に構成され、論理的に高揚し、音が激しくうねっていく。
フランクの前にバッハが演奏されたのは、このような意図があったのだろう。すなわち、新居は熱いロマンティックなフランクではなく、バッハの後継者としてのフランクを演奏したかったのだろう。ロマンティックな感情の高まりとしてよりも、音の重なり合い、音のうねりとしてとらえられる。それに最高度に成功していると思った。
新居さんのピアノを知ったのは2005年だったと思う。思えば、15年近く前のことになる。清潔で高貴な音のみずみずしい演奏をする若いピアニストだと思った。その後、多摩大学のゼミが企画するコンサートで新居さんに何度か演奏をお願いした。聴くごとに素晴らしいピアニストになるのを感じていた。ラヴェルの「ラ・ヴァルス」は華麗でダイナミックでまさに圧倒的だった。そして、今日聴いてみて、こんなことを言うのは、あまりにおこがましいが、本当にすごいピアニストになったものだと思った。少なくとも私は何度も魂を揺り動かされた。
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