イザイとショーソンの音楽を楽しんだ
2019年11月23日、東京藝術大学奏楽堂で「イザイとショーソン ふたりの絆が生んだ至高の音楽」を聴いた。
イザイとショーソンには交流があった。それどころか親しい友であり、しばしばともに行動した。その二人の曲を取り上げ、しかも、演奏者の一人が戸田弥生さんとあれば、ぜひ聞いてみたいと思ったのだった。冷たい雨の中、上野駅から奏楽堂まで歩いた。
演奏は、戸田弥生のほか、ヴァイオリンの加藤知子、大江馨、ヴィオラの佐々木亮、チェロの伊東裕、ピアノの藤井一興、津田裕也。
最初の曲、ショーソンのコンセールop.21(戸田、加藤、大江、佐々木、伊東、津田)がとてもおもしろかった。初めて聞く曲だが、フランス風の響きでありながら、ワーグナー風に盛り上がっていく。第3楽章、第4楽章の燃えるような表現が素晴らしいと思った。戸田のヴァイオリンの強い表情がこの曲にぴったり。繊細にして静かにもえたぎる様子が弓使いから聞こえてくる。ほかの演奏者たちも情緒に流れず、しかも抒情的でとても良かった。
休憩後、イザイ作曲の「エクスタッセ」op.21(加藤、藤井)と「ポエム・エレジアク」op.12( A.クニャーゼフ編曲 伊東、藤井)が演奏された。これも初めて聞く曲だった。私としては、ショーソンの曲よりは面白くないと思った。イザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタほどの衝撃もなかった。本当のことを言うと、ちょっと退屈だった。演奏はとても良いと思う。加藤知子のヴァイオリンもとてもきれいな音で丁寧に音を作り上げていき、静かに音楽の本質に迫っているのがよくわかる。若いチェリストの伊東裕の大胆で繊細な音に感心した。ただ、曲そのものにあまり引きつけられるものを感じなかった。
最後に、ショーソンの「詩曲」のイザイ版に基づく室内楽編曲版(加藤、戸田、大江、佐々木、伊東、藤井)。好みの問題かもしれないが、やはりショーソンのほうがいいなあ…と思ったのだった。ただ、ソロを演奏した加藤知子の個性だと思うのだが、あまり濃厚にならない。とても高貴で清潔な美音で、それはそれでとても素晴らしいのだが、詩曲はエロティックといえるほどに濃厚なものであってほしいと私は思っている。今日の演奏は、日本人的でアッサリ気味の詩曲になっていたのが、私としては少し物足りなかった。
とはいえ、珍しい曲を聴くことができて、とてもよかった。
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