ブロムシュテット+N響 モーツァルトのミサ曲ハ短調 しみじみと美しい演奏
2019年11月22日、NHKホールでNHK交響楽団定期演奏会を聴いた。指揮はヘルベルト・ブロムシュテット、曲目は前半にモーツァルトの交響曲 第36番「リンツ」、後半にモーツァルトのミサ曲 ハ短調 K. 427。
「リンツ」を聴いた時点で、ブロムシュテットもかつての勢いをなくしたと思った。第4楽章はとてもよかったが、その前はもたついているのを感じた。特に、第2・3楽章は少々退屈だった。音楽が流れず、途絶え気味になっていると思った。かつてのブロムシュテットにはなかったことだ。ミサ曲も期待できないかも…と思った。
が、その予想は間違いだった。ミサ曲は初めから素晴らしかった。自然に音楽が流れ、穏やかな心境が美しく描かれる。しみじみとして美しい。もともとそれほど起伏のある音楽ではないので、下手な演奏だと退屈しそうになるのだが、まったくそんなことはない。穏やかな表情が続くが、そこに様々なニュアンスがあり、絶妙な美しさがあり、静かな信仰心があり、心の奥にしみいる人間愛のようなものがある。哀しみのなかに慈愛があり、信仰心のなかに人間愛がある。そのように感じた。ずっと音楽にふけることができた。N響も見事な音を出してくれた。誇張がなく、しみじみと美しい。
歌手陣もとてもよかった。とりわけ、二人のソプラノ、クリスティーナ・ランツハマーとアンナ・ルチア・リヒターが素晴らしい。ともに宗教音楽にふさわしい澄んだ声で、音程もよく、しみじみとした歌唱が心地よかった。テノールのティルマン・リヒディもしっかりとした美声、バリトンの甲斐栄次郎も出番こそ少ないが、しっかりした歌唱だった。そして、新国立劇場合唱団もいつもながら声がしっかり出ており、見事。
バッハと違って峻厳な信仰は感じないが、穏やかで人間化された信仰を味わうことができた。
来年もまたブロムシュテットの演奏を聴きたいものだ。
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