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ヤノフスキ+ケルン放送 男性的な「英雄」を堪能

 20191126日、サントリーホールでケルン放送交響楽団の演奏を聴いた。指揮はマレク・ヤノフスキ。曲目は、前半にピアノのチョ・ソンジンが加わって、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」、後半にベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」。

 いつもと客層が違うのに気付いた。女性が多い。とりわけ若い女性がかなりいる。チョ・ソンジン人気なのだろう。ショパン・コンクールに優勝した若い男性なのだから、人気も当然といえば当然だろう。

 が、私個人としては、チョ・ソンジンのピアノには特に惹かれなかった。第3楽章など、とても魅力的な音を感じたが、あまりベートーヴェンらしくなかった。指のタッチにちょっとムラがある気がする。違和感を覚えた。ピアノのアンコールにブラームスの間奏曲の1曲。これもあまり面白いと思わなかった。ピアノの音はとてもきれいなのだが、それ以上に迫るものを感じない。

「英雄」は素晴らしかった。ヤノフスキの音楽を推進していく力が見事。がっしりと音楽を構築していく。少し前にコンセルトヘボウのあまりに精妙な音を聴いて驚嘆したのだったが、ケルン放送交響楽団はそれに比べると、あまりに粗削りといっていいだろう。だが、そのような音をヤノフスキは勢いをつけ、がっしりと組み合わせて、大きな音楽にしていく。四管編成の大規模なオーケストラが棒にこたえて、まさしくベートーヴェンの世界を作り出す。これはこれで、コンセルトヘボウなどとは異なった音の魅力がある。

 クリアな音なのだが、これまでにヤノフスキに比べると、音は重めに感じた。明瞭に音楽を作っていく。確信にあふれており、不明瞭なところがない。全体的に速めのテンポなのだが、とりわけ第3・4楽章はかなりの快速。その高揚感は素晴らしい。興奮した。

 アンコールはベートーヴェンの交響曲第8番の第2楽章。とてもチャーミングな演奏だった。「英雄」で男性的なベートーヴェンを披露したので、口直しに、ちょっと愛嬌のあるベートーヴェンを披露したといったところだろう。小回りが利いて、ちょっとユーモラスで、しなやかな演奏だった。

 ヤノフスキはまさしく巨匠だと痛感した。

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コメント

小生は、21日に、オペラシティで、ベートーヴェンの『田園』と『7番』を、聴いて参りました。昨年末の、NHK交響楽団との『第9』が、あまりにも素晴らしかったので、期待して望んだのですが、予想に反して、多少不満が残りました。結局、日独のオケの特質の違いが、一番大きいものと、感じました。片や、わが国を代表する先進的なオケと、ドイツ西部の大都市の伝統的なオケの違いというか。音量は、十分にあり、豊かなのですが、音色が、全体に鈍く響き、各声部が渾然として、切れがよくありません。ご指摘のように、総じて、粗削りと、いう印象でした。表現も、『田園』は、テンポも、快適で、聴いていて、眠気を誘うほど気持ちがよく、楽しめたのですが、『7番』は、前半は、厳粛で、よかったのですが、後半の速い楽章が、あまりにも遅くて、ダイナミクスも、メリハリがなく、いささか盛り上がりに欠けました。サントリーの『英雄』は、聴けませんでしたが、大河のように悠然とした曲想のテンポなので、このオケには、よく合っていたのではないか、と思いました。アンコールは、同じく『8番』の第2楽章で、これは、十分に楽しめました。しかしながら、後から、思い出すと、全体に、曲想を、よく歌わせていたのではないかと、思うようになりました。ドラマティックな演奏を期待したこちらの思いが、大き過ぎた?と。ともあれ、来春の、東京・春の音楽祭で、ヤノフスキが、『トリスタンとイゾルデ』と、『ミサ・ソレムニス』の大曲で、N響と共演するので、今から楽しみにしております。

投稿: おとだま | 2019年11月29日 (金) 06時31分

おとだま 様
コメント、ありがとうございます。
第7番の演奏が遅かったとのこと、それでは確かにがっかりしますね。「エロイカ」のほうはむしろ後半、かなりの快速でした。ヤノフスキはどちらかというと速めのテンポを取ると思いますので、第7番はどうしたのでしょう。昨年のN響の第九、私は第3楽章までは、といいますか、オーケストラについては最高に素晴らしいと思ったのでした。ソリストに違和感を抱きました。東京・春の「トリスタン」と「ミサ・ソレムニス」は私も今から楽しみにしています。

投稿: 樋口裕一 | 2019年12月 2日 (月) 09時34分

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