マリインスキーの「スペードの女王」 とてもよかったが、驚異的ではなかった
2019年12月1日、東京文化会館でマリインスキー・オペラの来日公演、チャイコフスキーの「スペードの女王」をみた。指揮はワレリー・ゲルギエフ。ものすごい上演が見られると思っていたのだが、それほどではなかった。
このオペラの実演を見るのは、たぶん3回目か4回目だと思う。あまりなじんだオペラではない。実を言うと、納得のいかないところも多い。第2幕の牧歌劇をなぜあれほど長々と続ける必要があるのか、第1幕の公園の場面で子どもたちを出す必要がなぜあるのか…などなど作劇的にも音楽的にも疑問に思う。アレクセイ・ステパニュクの演出が私の疑問について何らかの答えを示してくれるのかと思っていたが、それはなかった。いっそう疑問をわきあがった。あまり個性的な会社拡販されていないように思う。
歌手陣についても、ゲルマンを歌う大歌手ウラディーミル・ガルージンに期待していたのだが、ヴィブラートが強いのが気になった。声が出なくなってテクニックで補っているのだろうか。リーザ役のイリーナ・チュリロワはしっかりした声と演技。ただ、立派すぎてリーザの悩みが伝わらない。トムスキー伯爵 のウラディスラフ・スリムスキー、エレツキー公爵のロマン・ブルデンコは悪くないのだが、感動するほどではなかった。
しかし、ゲルギエフ指揮のマリインスキーの音はさすがというべきか。金管が実に素晴らしい。ただ、オーケストラについてもゲルギエフの魔法のような音楽を期待していたのだが、意外と普通の演奏だった。
全体的に、もちろんとても良い演奏だったのだが、マリインスキー劇場のチャイコフスキー・オペラということで、とてつもないものが見られるのではないかという期待には答えてもらえなかったといえそうだ。
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