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和光の「ナブッコ」 「行け、わが想いよ」の合唱に涙した!

 20191222日、和光市民文化センターでオペラ彩定期公演「ナブッコ」をみた。オペラ彩は、埼玉県和光市に本拠を置いて活動する特定非営利活動法人で、今回で定期公演は36回目にあたる。近年、日本のあちこちで市民オペラが催されているが、これはそのもっとも成果を上げている例といえるだろう。

 前半は少しぎこちなかった。歌手たちの音程が定まらなかったり、声が伸びなかったり、合唱のタイミングにずれがあったり。だが、だんだんと実力を発揮してきた。

 まずオーケストラがしっかりしている。管弦楽はアンサンブル彩。臨時編成のオーケストラだと思うが、ヴィート・クレメンテの指揮にしっかりと応えて、たっぷりの音をしばしば聴かせる。指揮もゆっくりとしたテンポでじっくりと鳴らしていく。

 舞台もとても本格的で、直井研二の演出はわかりやすく、みごとに紀元前の世界を作り上げている。色彩も美しい。衣装もみごと。地方のオペラにありがちなチープさはみじんもない。ひとりひとりの動きがすべて様になっている。

 歌手陣も充実。私はアビガイッレ役の石上朋美に特に惹かれた。迫力のある声で、声量もたっぷり。他を圧するだけの存在感があり、この役にぴったり。フェネーナの杣友恵子も可憐な美声がとてもよかった。ナブッコを歌う原田勇雅も、狂気に陥ったり、正気に戻ったりと、表現の難しいこの役を見事に歌いこなしていた。イズマエーレの大澤一彰も安定した美声、ザッカリーアの佐藤泰弘は最初のうち声が安定しなかったが、徐々に声が伸びてきた。ベルの大祭司の福井克明、アブダッロのパク・ドンイルもしっかりした声。

 第四幕の合唱はとりわけ素晴らしかった。最後まで静かに美しく声が続いた。涙が出てきた。合唱の一人一人がヘブライ人になりきって故国への思いを歌っているかのようだった。合唱も混成部隊のようだが、見事。

 私は、WEB版ぴあの「水先案内」でこの公演を紹介した。この団体の理事長であり、今回の公演の総合プロデューサーであるる和田タカ子さんと知り合い、話を聞いて、間違いなく素晴らしい公演になると確信したからだった。だが、まだ私は紹介を書いた時点では、この団体の実力を知らなかった。東京二期会や藤原歌劇団の公演に比べて、不安定であったりチープであったりするのではないかと思っていた。だが、まったくそんなことはない。これらの団体に比べてまったく遜色がない。

 特定非営利活動法人がこれだけの公演をこれまで何度も成功させてきたことに改めて驚嘆した。このような公演がなされている限り、厳しい環境にあるといいながら、日本のオペラの未来は明るいと確信した。

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