ヤング+N響の第九 あまりに見事な、そして穏やかな第九!
2019年12月26日、サントリーホールで、N響第九Special Concertを聴いた。曲目は、第九の前に、勝山雅世のオルガンによりヘンデ、アルビノーニ、バッハの作品が演奏された。流麗なオルガンでとてもおもしろかった。
そして、いよいよシモーネ・ヤングの指揮による第九。
とても論理的で繊細な演奏。音が透明でメリハリがあり、しっかりと一歩一歩進んでいく。しなやかな音が見事にうねっていく。ただ、あまりに穏やか。もちろん、激しい音楽の動きはあり、それはそれでとても魅力的なのだが、それでも穏やかで予定調和的。デモーニッシュなところがない。第1楽章冒頭からして、あの得体のしれないあいまいさがなく、明晰になってしまう。明晰なのは私は大好きなのだが、ベートーヴェンの第九の第1楽章と第2楽章は明快すぎると魅力を感じない。デモーニッシュであってほしい。
第3楽章はあまりに美しい。ゆっくりしたテンポで音と音が見事に重なり合い、精妙に展開されていく。N響の音も素晴らしい。ただ、第1・2楽章がデモーニッシュでなかったために、私としてはどうしてもこの第3楽章も天上の音楽に聞こえてこない。晩年のベートーヴェンの並外れたスケールを感じない。きわめて女性的で繊細で穏やかな、つまりは人間的な音楽になってしまっている。
第4楽章についても、もちろん素晴らしい演奏だった。ソリストたち(マリア・ベングトソン、清水華澄、ニコライ・シュコフ、ルカ・ピサローニ)はいずれも音程はいいし、声はきれいだし、指揮者の要求を十分に表現していると思う。とりわけ、テノールのシュコフの自由な歌いまわしがこの曲にふさわしいと思った。ただ、ここも熱狂的な祝祭感が不足する気がする。
私のこの曲に対する思い入れが、ヤングの演奏と重ならないだけのことではあるのだが、最後まで、見事な演奏だと思いつつ、心から感動することはできなかった。
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