パパヴラミ+岡田のデュオ パパヴラミのヴァイオリンに酔った!
2020年1月14日、王子ホールで、テディ・パパヴラミと岡田真季のデュオ・コンサートを聴いた。素晴らしかった。興奮した。パパヴラミのヴァイオリンに酔った。
パパヴラミをナントのラ・フォル・ジュルネで知った。あまり名前は知られていないが、ものすごいヴァイオリニストだと思った。その後、日本のラ・フォル・ジュルネでも聞いて、何度も深く心を動かされてきた。今回、王子ホールで演奏が行われると知って、慌てて駆け付けた。
最初の曲目、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第8番の最初の音から、その鮮烈な音に驚嘆。切っ先鋭くて細身で躍動感のある音。その音でダイナミックに、しかも研ぎ澄まされたリズムで音楽を展開していく。2曲目はプーランクのヴァイオリン・ソナタ、その次の曲ハドビュッシーの「ミストレル」(ドビュッシー自身によるヴァイオリンとピアノのための編曲版)。これらの曲も、筋肉質でダイナミックな音。一つ一つの音が美しく、切れがいい。音楽も立体的で躍動感にあふれている。
岡田真季さんの書いたプログラムノートによれば、今回のテーマは「ご機嫌・ユーモア」だとのこと。ちょっとユーモアがある曲が選ばれている。だが、ユーモアというよりも、むしろ、「一筋縄ではいかない曲」というべきだと思う。諧謔に満ちていたり、皮肉っぽかったり、ユーモラスだったりと、様々な表情を持ち、解釈によってどうとでもとらえられるような曲が並んでいる。ベートーヴェンの第8番のソナタの第2・3楽章はまさに、ちょっと肩透かしを食わせるような曲想。私としては肩透かし具合をもっと強調してもよかったのではないかと思うが、それはそれでとても魅力的な音楽になっている。
後半のプロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ第2番は圧倒的な名演だった。ダイナミックで、不気味で、おどろおどろしく、しかもユーモラス。特に第2楽章は、なまはげの大活躍のような雰囲気。それを研ぎ澄まされた音のダイナミックな動きによって表現する。凄い! 音の躍動そのものに感動してしまう。
最後のサラサーテによる「カルメン幻想曲」は、圧倒的なテクニックを聞かせてくれた。しかし、テクニックに溺れるのでなく、筋肉質できりりとした音楽がずっと生きている。妙な思い入れがなく、研ぎ澄まされた音によって情熱を展開していくので、いっそう音楽が冴えわたる。
ピアノの岡田も健闘。パパヴラミのような鮮烈さはないが、しっかりとパパヴラミを支え、ヴァイオリンと対話している。パパヴラミと息もあっている。
プロモーションの失敗なのだと思う。席は半分も埋まっていなかった。三分の一くらいの入りだったのではないか。こんなすさまじい名演奏なのに、客が少ないのは何とも残念でもったいない。
パパヴラミは大ヴァイオリニストだと思う。また聴きたい。
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