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オペラ映像「チェネレントラ」「眠れる森の美女」「道化師」

 緊急事態宣言下、私は外出を自粛して、自宅で仕事をしている。これから医療崩壊が起こるのか、感染爆発が起こるのか。それとも、何とか食い止められるのか。重苦しい。

 私自身は、先日購入した電動機付自転車を乗り回したり、オペラ映像をみたり、DVDで映画をみたりして、重苦しさをそれなりに解消しているが、これがこれから先も続くと思うと実につらい。次々と予定していたコンサートの公演中止の連絡が舞い込む。

 ともあれ、この数日間にみたオペラ映像の感想を記す。

 

ロッシーニ 「チェネレントラ」 2016年 ローマ歌劇場

 全体的にはとてもよくまとまった上演。

 アンジェリーナを歌うセレーナ・マルフィは、可憐というよりはちょっとボーイッシュで迫力がある。王子役のフアン・フランシスコ・ガテルはやや陰りを感じる。ともに、ロッシーニのあけっぴろげの楽天性からは程遠い。なかなか良いのだが、二人ともつき抜けたものを感じない。もっと輝かしくあってほしい。

 アレッサンドロ・コルベッリのドン・マニーフィコがもっとも安心してみていられる。芸達者でおもしろい。ヴィート・プリアンテのダンディーニ、ウーゴ・グァリアルドのアリドーロも悪くないが、声の処理の雑なところを感じた。

 アレホ・ペレスの指揮するローマ歌劇場管弦楽団についても、歌手たちと同じような印象を受けた。悪くはないのだが、あと一歩突き抜けた表現がないので、心の底から満足することはできなかった。

 演出はエンマ・ダンテ。アンジェリーナを取り巻くネズミたちや王子の召使たちの背中に大きなネジが取り付けられている。彼らはネジ巻き人形という設定になっている。そして、悪役であるドン・マニーフィコと二人の娘が心ならずも従順になったとき、彼らも背中にねじを取り付けられる。どうやらネジは、権力に飼いならされて従順になった存在の印らしい。なかなかに皮肉な演出だと思う。

 もう少し突き抜けた「チェネレントラ」を期待していたのだったが、十分に楽しむことはできた。

 

レスピーギ 「眠れる森の美女」 2017年 カリアリ歌劇場

 ペローやグリムに取り上げられている「眠れる森の美女」に基づくファンタジー・オペラ。レスピーギにこのようなオペラがあるとは、今回の発売まで知らなかった。

 ただ、ペローなどでは、La Belle au bois dormant であって、文字通りに読むと、「眠っている森・の美女」という意味だが、このオペラのタイトルはイタリア語で、La Bella dormente nel boscoなので、「森の中の・眠っている美女」ということになる。なぜ、このような違いがあるのか気になるところだが、物語としてはどちらでも大差ないので、あまり気にしないことにする。

 妖精たちが登場してバロック風に歌う、まさにファンタジックなオペラ。ドラマティックに個人の感情を歌い上げるようなことがないが、それがむしろ心地よい。アンジェラ・ニシの王女は清純できれいで、王女にぴったり。そのほか、妖精たちもきれいな声。ドナート・レンツェッティの指揮によるカリアリ歌劇場管弦楽団の演奏も、私は特に不満を感じない。

 王女は300年眠ったとされ、王女を目覚めさせる王子は現代人という設定。現代の服装をしている。演出のレオ・ムスカートによる工夫かと思っていたら、音楽も現代的になって、王女が目覚めた場面ではバロック風の音楽と、ジャズ的な要素の混じった現代的な音楽が入り混じる。なかなかおもしろい。

 名作オペラとは思わなかったが、もっと取り上げられてもいいオペラだと思った。

 

レオンカヴァッロ 「道化師」2019年 フィレンツェ五月音楽祭劇場

 とても良い上演だと思うのだが、肝心のカニオ役のアンジェロ・ヴィッラーリがあまりに不安定。なぜ、こんな音程の狂った歌手が主役を張るのか、私には理解できない。この歌手、「沈鐘」でも同じような歌いっぷりだった。しかも、喝さいを浴びている。どういうことだ?

 ネッダを歌うヴァレリア・セーペが素晴らしい。ちょっと蓮っ葉で、でも清純で、しっかりした声。シルヴィオを歌うのはレオン・キム。韓国系の歌手だと思うが、とてもいい。この二人のデュオの部分が最も良かった。トニオのデヴィッド・チェッコーニは安定しているが、あと少しの迫力が欲しい。

 ヴァレリオ・ガッリ指揮のフィレンツェ五月音楽祭劇場管弦楽団は勢いがあって、とてもいい。

 演出はルイージ・ディ・ガンギとウーゴ・ジャコマッツィ。一人一人の動きや表情がとてもリアルで、集団の動きも躍動感があってよい。子どもが指揮の真似をするのも、とても自然。様々な色を使って生命にあふれた雰囲気を出している。ただ、私の趣味としては、もっと下品で、もっと差別的な雰囲気があるほうが望ましいが、現代社会ではそうはいかないのだろう。

 カニオ役がもう少し音程がしっかりしていたら、私は大いに感動しただろう。

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