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「愛情物語in Paris」(「アンドレア・シェニエ」の物語)を楽しんだ

 202088日、川崎市の小黒恵子童謡記念館で、ANCORA+特別企画 愛情物語in Paris「アンドレア・シェニエ」より をみた。

 脚色・台本・演出は三浦安浩。「アンドレア・シェニエ」から抜粋し、フランス革命の時代と現代をつなぐ語り手役を配し、日本語による台本をつけ足して、奇跡的に日本人にもわかりやすくおもしろい物語に作り直している! 歌のほとんどは原語で歌われるので、よくわからないところはたくさんあるが、音楽の魅力もあって、特に気にならずに物語に入り込めるようにできている。

 歌手陣は充実している。私はとりわけ、シャルル・ジェラールを歌う清水良一とシャルルの父親などのいくつかの役を歌う大塚博章に感銘を受けた。清水は複雑な役を見事な声で歌った。大塚も、シャルルの父親の役では少々不自然な演技だった(年齢的に、かなりこの役は現在の大塚さんには苦しい!)が、それ以外の役を演じると、堂に入っている。声の豊かさは圧倒的。

 マグダレーヌの斉藤紀子も芯の強いしっかりした声。ほかの歌手陣もそろっており、しっかりと音楽を盛り上げた。ただ、題名役の小野弘晴について、私には声のコントロールが不足するように聞こえた。声は出ているが、私に言わせれば、むしろ声が出すぎている。こんな小さな会場でこんなに声を張り上げる必要はないだろうと思う。声を張り上げようとするあまり、コントロールが甘くなっているように思えた。

 小さな劇場でオペラを見るとき、常に思うのだが、歌手の方たちは声の威力を発揮しようとしすぎるのではないか。ささやくような声があり、しんみりとした静かな声があってこそ、フォルテの声の威力が出る。いや、そもそもささやくような声にこそ、迫力が宿ると思う。完璧な音程で観客の心の中にじっくりと入り込む弱音こそ、私は歌手の醍醐味だと思うのだが、それは私が素人だからだろうか。

 ピアノは村上尊志。私の席のせいか、初めのうち音のバランスが悪く思えたが、徐々に良くなった。

 三浦安浩流の味付けの「アンドレア・シェニエ」。イタリア・オペラに疎い私はそれほどこのオペラになじんではいない。実演と映像を合わせて数回みたことがある程度だ。だが、三浦流案内のおかげでフランス革命の時代(学生のころ、フランス革命が大好きで、何冊も関係書を読んでいたのを久しぶりに思い出した!)に戻ることができ、激動の時代、先の見えない時代の愛の激情を目の当たりにできた。三浦さんの群衆の作り方に感服。少人数でありながら、祝祭感を出し、激動の時代であることを予感させている。

 三密を避けた客席の配置(ただ、歌手たちが大声なので、実はちょっと感染が心配になった)がなされ、ソーシャル・ディスタンスという言葉が繰り返し台本でも触れられる。三浦さんが挨拶でも触れていたが、オペラこそ新型コロナの直撃を受けている。負けないでほしいと無責任に言うだけしかできないが、本当に歌手の方々に先の見えない状況に負けないでいただきたいものだ。

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