YAMATO String Quartetのベートーヴェン 温和なベートーヴェンだった!
2020年8月12日、神奈川県立音楽堂でYAMATO String Quartetによるベートーヴェンの中後期弦楽四重奏曲連続演奏の第2回(昼の部)を聴いた。演奏者は第1ヴァイオリン・石田泰尚、第2ヴァイオリン・執行恒宏、ヴィオラ・榎戸崇浩、チェロ阪田宏彰。残念ながら、私の好みの演奏ではなかった。いや、もっとはっきり言えば、私の最も苦手なタイプの演奏だった。
初回(8月8日)と同じタイプの演奏。穏やかで微温的。私には、単に合わせているだけに聞こえる。石田さんのヴァイオリンはとても魅力的な音だと思う。第10番ハープの第2楽章など、とても美しい。が、それにしても、あまりに穏やか。
第11番「セリオーソ」になったら、もっと激しくなるのかと思ったら、雰囲気は変わらず。後期作品である第12番になると、もっと強烈になるかと思ったら、これまた変わらず。
「セリオーソ」は本来、激しく強烈な第1楽章に始まり、内省的になり、最後、ロッシーニ風になる曲だと思う。その起伏が魅力だと思うのだが、私には今日の演奏は牙を抜かれた音楽に聞こえる。第12番も、後期のベートーヴェンに特有の最後に到達した激しくも静謐な研ぎ澄まされた音が聞こえてこない。きっと、演奏家たちは、穏やかさを表現しようとしているのだろう。それがベートーヴェンの境地と考えているのだろう。
私がベートーヴェンの弦楽四重奏曲に求めている音は最後まで聞こえてこなかった。
日本の団体のベートーヴェンの弦楽四重奏曲のコンサートに出かけると、しばしばこのようなタイプの演奏に遭遇する。そのたびに私は不満に思う。日本人の演奏家の手にかかると、ベートーヴェンまでもが和の音楽になってしまうのを感じる。私はベートーヴェンの弦楽四重奏曲は典型的な衝突の音楽だと思う。晩年の四重奏曲も、様々な衝突を起こした後に突然訪れた静謐の瞬間の音楽だと思う。
そんなわけで、今日は残念だった。
出かけたときには、36℃の炎天下だったが、コンサートが終わって自宅の最寄り駅に降りたら、雷雨の後だったらしく、地面は濡れ、気温は28℃に下がって、いくらか過ごしやすくなっていた。
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