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映画「シリアにて」 ドキュメンタリー・タッチで緊迫のシリアを描く

 岩波ホールで、映画「シリアにて」をみた。監督はフィリップ・ヴァン・レウ。ベルギー出身の監督だ。

 シリア内戦中の首都ダマスカス。砲弾が飛び交う中、避難しないでマンションにとどまる家族の緊迫した一日を描く。夫が戦地に行っているため、妻のオームが義父と子ども3人の家族を守っている。そこに、上の階に住む若夫婦と赤ん坊も身を寄せている。ところが、朝、若夫婦は外国に逃れようとして夫がその算段に外出したとたん銃撃手に撃たれてしまう。家政婦がその瞬間を目撃し、若妻にそれを伝えようとするが、オームは、若妻がすぐに夫のもとに行くと危険があまりに大きいので知らせることを禁止する。オームの判断は正しかったのか、いつまで秘密を守れるか、オームはいつ打ち明けるのか。そうした緊迫した雰囲気の中で物語は進む。

 オームは家族を守るため責任を引き受け、若夫婦を乱暴な兵士の犠牲にする。きれいごとは許されないぎりぎりの中でオームは必死に身を守ろうとする。そうする以外に家族を守るすべがない。そのような状況を、この映画は過度に感情移入せず、ドキュメンタリータッチで描いていく。戦場のリアルが伝わり、残酷になっていく兵士たち、痛みを分かち合いながら生き抜こうとする人たちの様子がよくわかる。誰も信用できない。親しい人以外はみんな敵という状況。確かに戦場はこのような状況になっているのだろう。

 ただ、私の認識不足のせいだと思うが、マンションが正確にはどのような状況にあるのか、よくわからなかった。シリアは政府派と反政府派とISが入り乱れて戦っているということだが、若妻を犯す男たちは政府派なのかISなのか。この家族の宗教は何なのか。イスラム教の祈りの音楽が聞こえるのにこの家族は祈っている様子はないので、もしかするとイスラム教徒ではないのか。では、どのような状況にいるのだろう。そうしたことについて疑問が残った。

 若い夫は銃撃では殺されていなかった。病院に運ばれた。そこに救いはある。だが、安易な解決は示されないまま、映画は終わる。現実も同じように、解決の糸口はつかめないまま、まだしばらくこのような状況が続くのだろう。映画はそのような現実を教えてくれる。

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