広上+N響の「町人貴族」 きれいな演奏だったが、ちょっと香りが不足
2020年9月19日、東京芸術劇場でHK交響楽団定期公演を聴いた。指揮は広上淳一。曲目は、ウェーベルン(シュウォーツ編)緩徐楽章(弦楽合奏版)、リヒャルト・シュトラウス 歌劇「カプリッチョ」より六重奏(弦楽合奏版)、リヒャルト・シュトラウス組曲「町人貴族」作品60。ヴァイオリン・ソロを受け持つコンサートマスターは白井圭。
かなりの空きの多い客席だった。新型コロナウイルス感染予防のためだけでなく、もしかしたら客の入りが悪かったのかもしれない。演奏も、もちろん悪くはないのだが、精妙に決まったかというと、そうでもなかった。芳醇なワインのような上質な香りの立ちのぼる演奏を期待していたが、ちょっと肩の力が入りすぎている気がした。ほんのちょっとリハーサルが不足しているのだろうか。
ウェーベルンについては、かなり後期ロマン派的な演奏。「カプリッチョ」は、聴きなれた六重奏とは異なって、かなりドラマティックな盛り上がりがあった。マエストロ広上の判断なのだと思うが、私の個人的な好みからすると、弦楽合奏版にしても、六重奏と同じように、穏やかな演奏のほうがよかったのではないか。この曲で盛り上げても盛り上がる先がないような気がするのだが。
「町人貴族」は徐々にオーケストレーションが色彩感を増していった。シュトラウスらしいオーケストレーションの醍醐味を感じられるような演奏だった。ただ、これについても、私は、もっと軽やかで、もっと芳醇な、まさしく軽い上質のワインのような後味のある演奏が私の好みだ。今回の演奏は、ちょっと強すぎるというか、重すぎるというか。
とはいえ、もちろん美しいオーケストラの音を味わうことができ、白井圭のしなやかで流麗なヴァイオリンを聴くことができて、幸せな時間を過ごすことができたのはうれしかった。
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