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アンサンブル・ノマドと波多野睦美 土地の風が吹き、草のにおいがする演奏

 2020915日、東京オペラシティ リサイタルホールでアンサンブル・ノマドの第69回定期演奏会を聴いた。ゲストとしてメゾ・ソプラノの波多野睦美が出演。素晴らしい演奏だった。とても楽しい時間を過ごすことができた。

 曲目はまさしくこのアンサンブルの名称ノマドに示される通り、バロックから現代まで、ヨーロッパ、アジアなどの様々な時代の様々の国の音楽。いずれも、その土地の風が吹き、その土地の草のにおいのするような演奏だった。しかも、いずれもその民族の誇りが漂うような高貴な演奏。時代に迎合するのではなく、美しくすがすがしい世界を作り出してくれた。私はずっと感動して聴いた。

 バスケスの「旅の印象」(2016)より第3番、第8番は日本初演、高橋悠治(会場に来ておられた!)の「冷却の音(藤井貞和の回文詩による) (2020)と渡辺裕紀子の「ソングス 」は世界初演。いずれもちょっと不思議な曲だったが、言葉と音楽の絶妙のアンサンブルが際立っていた。これらの演奏には、波多野の音程の正確なヴィブラートの少ない清澄な声が不可欠だっただろう。言葉の響きがストレートに伝わる。私には、今日歌われた言葉のうち、それなりの判別できるのは日本語のほかは英語くらいだが、イタリア語もカタルーニャ語もベトナム語も韓国語もポルトガル語もきっと正確な発音だったのだと思う。そうでなければこれほど美しく言葉が響かないはずだ。波多野がいかに言葉を大事にしているかが伝わってくる歌唱だった。

 佐藤紀雄を中心とするアンサンブル・ノマドも、10名を少し超すメンバー一人一人の技量が確かで、とても美しいアンサンブルを聞かせてくれた。音程の取りにくい楽器も混じっているはずだが、しっかりと音が合って、清澄な雰囲気を作り出す。ヨルダン・マルコフの演奏するガドゥルカという楽器の奥深い音色にも驚いた。弦楽器も凛として美しい。

 隣の席を空けて座って、全員で100名程度の客だった。こんな素晴らしい演奏をこれだけの人数しか聴けないのがもったいないと思った。

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