澤クヮルテットの「ラズモフスキー第3番」 繊細過ぎない率直な音楽
2020年10月5日、横浜市鶴見区民文化センター「サルビアホール」で澤クヮルテットの公演を聴いた。
サルビアホールは定員100名程度のホールだ。そこを新柄コロナウイルス対策として隣の席を空けているので、50名。なんという贅沢。
曲目はモーツァルトの弦楽四重奏曲第19番「不協和音」、ドビュッシーの弦楽四重奏曲、そしてベートーヴェンの弦楽四重奏曲第9番「ラズモフスキー第3」。
繊細すぎず、工夫をしすぎない率直な演奏というべきだろう。細かいところにはあまりこだわらずに、ともかくスケール大きく音楽をつくっていく演奏だと思う。だが、もちろん繊細さがないわけではない。それよりも音楽の勢いを重視し、神経質にならないところがいい。
とりわけドビュッシーにそれを感じた。フランス的な繊細さを強調しないで、バンバンと音を鳴らす。だが、そこにまぎれもないドビュッシーの音響が聞こえてくる。無理やり繊細にして遠慮するのでなく、率直に音を出すからこそ、その音が明確に聞こえてくる。そういえば、このごろ、とりわけ日本の室内楽は女性的な演奏が多い(実際に女性の演奏家が多い!)。その中にあって、この澤クヮルテットの演奏はきわめて男性的といってよいのかもしれない。久しぶりのこのような演奏を聴いた気がする。
ベートーヴェンの第9番の弦楽四重奏曲はとりわけ素晴らしかった。もともとスケールの大きな曲なので、それがこの団体にぴったり。ただ私はこの曲の第2楽章を、チャイコフスキーの「アンダンテ・カンタービレ」のようなロシア的憂愁を描く音楽だと思っているのだが、そのような情緒は欠けているように思った。が、第3楽章のメヌエットはとても美しく、終楽章の盛り上がりも見事。構築的でスケールが大きく、白熱した演奏だった。曲の全体像をがっちりとつかんで率直に魂を描いてくれた。感動した。
このような白熱した音楽を50人だけで間近で聴けて本当に幸せだった。
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