日本三大テノールを堪能した!
2020年10月13日、サントリーホールで「日本三大テノールの世界2020」を聴いた。出演は、日本三大テノールと呼ばれるにふさわしいジョン・健・ヌッツォ、樋口達哉、笛田博昭の三人。そして、六本木男声合唱団、東京フィルハーモニー交響楽団。指揮は園田隆一郎。とても楽しかった。
曲目はヴェルディ、プッチーニ、ジョルダーノのオペラ・アリアが中心。かつてのパヴァロッティ、ドミンゴ、カレラスの世界の三大テノールと同じように、ソロあり、三人の共演あり。遊び心たっぷり。三人の美声がホール内に響き渡る。
三人三様の歌いまわしだと思う。このような大きな会場で最もはえるのは笛田だ。声量があり、ドラマティック。ヌッツォが意外と軽い声質だということに笛田の声と比べてはじめて気づいた。強靭な軽い声というべきか。このような大きなホールでは、リリックに歌うタイプの樋口はちょっと分が悪い。タイプでいうと、ヌッツォがパヴァロッティ、笛田がドミンゴ、樋口がカレラスに近い。
イタリアオペラのアリアに交じって、このコンサートの主催者である三枝成彰さんの「レクイエム」と「Jr.バタフライ」からの暗い曲が演奏されたが、悲しみを歌う曲の存在感が示されて、コンサートを深いものにしていた。また、前半の終わりに岩井美貴のピアノ伴奏で「早春賦」(樋口)と「村祭り」(笛田)と「からたちの花」(ヌッツォ)がうたわれた。いずれも三枝成彰編曲のジャズ風にアレンジされたヴァージョン。これがとてもおもしろかった。これらの曲が現代曲に生まれ変わり、しかも十分に原典の味わいを残している。ピアノの演奏も見事。相当に演奏が難しかっただろう! 三枝さん(前にお会いした時、半月板損傷だといわれていたが、まだ治っておられないようだ!)と三人の愉快な話も加わって、なかなか楽しかった。
「乾杯の歌」を三人で歌った後は、これまた三人で「フニクリ・フニクラ」、そしてアンコールは「オー・ソレ・ミーヨ」。もちろんドイツ・オペラ好きの私の好みの曲ではないが、そんなことを言っている場合ではない。これはこれで実に楽しい。声そのものの醍醐味が存分に味わえる。会場内は大盛り上がり。
声楽に関しては、西洋と日本には少し前まで大きな差があった。日本の歌手のほとんどは世界では通用しなかった。だが、この三人が現れて(いや、この三人以外にも、何人かこのレベルの歌手がいる!)、間違いなく世界レベルになった。そのことを痛感できた。
ただ欲を言うと、せっかくロッシーニを得意とする園田さんが指揮をしたのだから、ロッシーニも曲目に加えてほしかったなあ!!
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