鈴木優人+日フィル 「新世界より」を聴いて懐かしくなった
2020年11月15日、江戸川区総合文化センターで「フレッシュ名曲コンサート 〜楽しいオーケストラ!」を聴いた。このホールを訪れたのは初めてだった。
日本フィルハーモニー交響楽団を指揮するのは鈴木優人。曲目は、最初にメンデルスゾーンの「夏の夜の夢」序曲、次に23歳の若きピアニスト原田莉奈が加わってベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番。後半に、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」。
メンデルスゾーンの若書きの曲と若いピアニストによる「フレッシュ」コンサートなのだろう。また、ふだんクラシック音楽を聴きなれない「フレッシュ」な人に向けてのコンサートという意味も含まれているのかもしれない。曲の間に、鈴木さん、そして原田さんが加わっての初心者向けのトークもはさまれた。
「夏の夜の夢」が始まった時点では、オーケストラの粗さが気になった。正直言って、「初心者向けということで、手を抜いているのかな?」と疑いを持った。だが、ベートーヴェンが始まったあたりから、音がしっかりと整ってきた。
原田莉奈のピアノは、清楚で高貴で音の粒立ちが美しかった。本人が語っていた通り、初めのうちは緊張が見えて、硬さが感じられたが、すぐにのびやかになっていった。感じの良いお嬢さんという感じなのでやむを得ないと思うが、まだ遠慮がちで自己主張が弱いのが残念。とはいえ、とても楽しみなピアニストであることは間違いないと思う。応援したい気持ちになった。
後半の「新世界より」は、さすがというべきか、素晴らしい演奏だった。どこかを強調したり、テンポを動かしたりといったことはしない、正攻法の演奏だが、ここぞというところで音が決まり、よどみなく音楽が流れ、ロマンティックに高揚していく。もともとこの曲は緊密に構成され、見事に統一が取れているが、ややもするとわざとらしくなってしまう。ところが、鈴木の手にかかると、音楽がおのずと統一あるものになっていく。そんな印象を受けた。終楽章では何度か感動を覚えた。アンコールはスラヴ舞曲集の一曲。これもよい演奏だった。
よく、「音楽を聴くと、それを聴いたころの光景や気持ちを思い出す。音楽は記憶と結びついている」という人がいる。だが、きっとそれはクラシック音楽以外の音楽のことを語っているのだろうと思う。クラシック音楽を繰り返し聴き続けている人間は基本的にそのような思いを抱いていないだろうと思う。私も、音楽を聴いて、それを聴いたころの記憶がよみがえるといったことはほとんどない。
だが、数少ない例外がある。それが私にとって「新世界より」だ。なぜかこの曲を聴くと、盛んにこの曲を聴いていた中学生の頃(50年以上前のことだ!)を思い出す。大分市の丘の上の墓地の隣にある家で、カレル・アンチェル指揮、チェコフィルによるこの曲のレコード(17センチ盤だったような気がするのだが、そんなはずないか?)を繰り返し聴いていた。生意気で傲慢なくせに気が弱くて引っ込み思案な子どもだった。社会に対してあれこれの思いを抱きながら、親に買ってもらったステレオでこの曲をかけていた。このレコードをかけている最中に地震が起こって針が飛び、レコードに傷がついたのではないかと心配したこと、同時期に音楽好きになった友人のF君から別の指揮者(ケルテスだったと思う)の演奏するレコードを借り、私の持っているレコードよりも評価が高いと知って悔しい思いをしたことなどを思い出した。当時、この曲は「交響曲第5番」という表記になっていた。
この曲はやはり「郷愁」をかきたてる力を持っているのだろうか。何やら懐かしい気持ちになって会場を出た。
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